躍動する広島の才能

体系化が進んだことで新戦力や若手が確実に戦力化され、選手個々の特徴を出しやすい環境も整った。

ここへ来て、23歳のMF松本泰志やユース出身21歳のMF東俊希が主力に組み込まれ、新鮮なアクセントをつけてチーム力に幅をもたらしている。

10番を背負うMF森島司も一皮むけた。天才肌ゆえに好不調の波が激しかったが、独創的なパスセンスで周囲を操り、自らはゴールも奪える危険な選手へと脱皮。守備時はアンカーのカバーにもまわる。プレーに丁寧さが出て、周囲への思いやりを感じさせ、それがチームの良い雰囲気につながっている。

4月下旬にフリーで加入した元スイス代表FWナッシム・ベン・カリファは、スキッベ監督の下でプレーするのが3チーム目。動き出しやパスをもらうタイミングが良く、シンプルなプレーを信条としていて攻守の切り替えが早い。

彼が野津田の球筋の速い縦パスを受けることでサイド一辺倒だった攻撃のバリエーションが増え、[3-4-2-1]から[3-1-4-2]へと前線の枚数を増やしても攻守のバランスが向上するキッカケになっている。

今季J1で5得点を挙げている大卒ルーキーFW満田誠はGK大迫と同期の広島ユース出身。

ユース時代は高円宮杯プレミアリーグWESTで得点王に輝きながらもトップ昇格はならず。流通経済大学に進学し、チョウ・キジェ(京都サンガ監督)氏の指導を受けて思考力や守備意識が開眼。プレースタイルが格段に拡がり、古巣でのプロ契約に至った。

当初は本来の前線のポジションではなく、左WBでの出場だった。

それでも持ち前のスピードや大学時代に培った思考力を駆使してWBの位置からでもゴールを量産。現在はシャドーとして主力に定着し、公式戦8ゴール。若手が躍動するチームを象徴する存在となった。

ユース出身選手の大学経由での加入は現在の守備の要であるDF荒木隼人が先輩にあたるように、他クラブでもどんどん増えているルートだ。広島ユースはハイレベルな選手を輩出し続けているだけに、今後も大学経由で加入する選手は現れるだろう。