広島でのサッカー改革

母国の育成改革と戦術革命に貢献したスキッベは、広島でも「指導者の指導者」らしい教育者のような真摯な姿勢で選手達と向き合い、ドイツ風の新たなサッカーを根付かせた。

広島のサッカーは従来、守備時に[5-4-1]の布陣で自陣のスペースを封鎖する守備ブロックを採用してきた。

ただスキッベは来日前からコーチ陣と密に連絡をとり、ボールを失った瞬間から強烈なプレッシングで相手を追い込むゲーゲンプレスを導入。ボールを奪った瞬間からショートカウンターを発動し、一気に攻め切る「湘南スタイル」のようなサッカーが開幕時には体現されていた。

J1開幕5戦未勝利と結果は伴わなかったが、自身も第3節より指揮を執ったスキッベは、手始めにサイド攻撃のトレーニングを徹底した。高体連のチームが取り組むようなシンプルなものだったが、成果は少しずつ出始めた。

攻撃面ではクロスの本数がリーグで2番目に多く、ドリブルでの仕掛けはリーグ最多を記録。特に右WBに定着した藤井智也はリーグ最多のクロス数を記録し、スプリント数でもリーグ最多1試合50回超えを計測するなど、不可欠な存在となっている。

また、開幕からボールを奪う段階まではハマっていたため、奪ったボールをサイドへ展開することを徹底したことで失点のリスクを回避し、大幅に失点が減った。

第6節以降は日本代表GK大迫敬介が先発復帰。DFラインを高く押し上げて前線からボールを奪いに行くサッカーには、守備範囲が広く、飛び出しに長ける大迫の起用で整合性がとれた。

守備に費やすエネルギーをそのまま攻撃に転換できるようになったことで得点も増えてきた。攻守のつなぎ目がなくなり、今や早さではなくクオリティで語ることができる次元に達したトランジション(切り替え)の局面では間違いなくリーグナンバーワンのチームだ。