「ピッチ内がすべて」志村が思う海外適応の秘訣
――モンテネグロに初めて行った際、サッカーの第一印象は?
「この環境でやっているのか」というのが第一印象でしたね。それは日本が凄すぎるんです。環境が整いすぎているほど。おそらくJFLや地域リーグのほうが整っているのではないかと思います。
まず、スタジアムというスタジアムがなかったりしますね。自分が行った時は、まだスタンドがメインしかなかったり、ゴール裏はその辺から立ち見ができるようなところもありました。
個人的に一番辛かったのは「シャワー」ですね。水がタンクに溜められていて、それを電気で温めているんです。なので、他の選手たちが先に浴びてしまうと、最後はとにかく冷たいんです!
ヨーロッパのピッチは芝の下が粘土質なので、グチャグチャになることが多いんです。ドロドロで絶対体を洗いたい状況なのに冷水しかない。真冬はそれが一番キツかったですね。
――ハングリー精神が培われる環境でもありますね。最低限のサッカー用語は覚えていったと伺っていますが、言語については?
ストライカーであれば言語は必要ないところもあると思うんですけど、守備や中盤の選手なら周りに指示を出さなくてはいけない。さらに味方の言葉も聞き取らないといけない。
現地でサポートしていただいている方から、サッカー用語だけは全部聞いて、ノートにまとめて、それだけは一番最初に覚えました。
最初の練習参加へ行く時に3時間ぐらいかかったんですが、そこでほとんど記憶しました。なので、その点では最初から困らずに入れましたね。
モンテネグロでは、それほど英語が通用しないんです。きちんと現地の言葉を覚えてピッチの中ですぐ使えるというのは、かなりプラスになったと思いますね。
現地で英語を話せない人は、本当に喋れないんです。日本人も「英語が苦手」と言われているのに、欧州の人がこんなに喋れないんだ!と衝撃を受けましたね。数字も言えない、曜日も月も分からないというほどでした。
――勉強はしていたとはいえ、加入したときは現地語を完璧に話せたわけではないですよね。そこで認められるためにどのような振る舞いをしましたか?
言葉よりも、やはりピッチ上ですね。「戦えるか、戦えないのか」がモンテネグロでもセルビアでも絶対必要だと思います。
5大リーグなどに行けば違うのかもしれませんが、ここでは間違いなく「デュエル」です。ハリルホジッチ監督も言っていたように、本当に大事なんです。
抜かれそうなら「足裏で行ってでも止めろ!ファウルしてでも止めろ!」というのが普通です。それができない選手は本当に認められないですね。
絶対にピッチ内のほうが重要です。日本人であれば、ピッチ外での振る舞いはそれなりにできると思います。集団行動ができる国民性だと思うので、そこの部分で浮くということはありません。
逆に、ピッチ内で戦えなければロッカールームであの雰囲気に入っていくこと、チームメイトに絡んでいくことは難しいですね。
練習でもシュートゲームで負けたりすると勝ったチームから罵られますし、逆にそこで勝てば認められます。だからトレーニングから負けることがまず許されないですね。
――「言葉をちゃんと覚えてから」という方もいますが、プレー面がそれだけ重要なのですね。
むしろ「ピッチ内がすべて」だと思います。サッカー選手であれば、結果を出せない選手は終わりです。ここで言えば、球際で戦えるか戦えないか。そこは絶対ですね。