「ビジョンKA41」から始まった、今の鹿島
最後は、今回のフォーラムの主催した鹿島アントラーズ。
鹿島アントラーズ取締役事業部長の鈴木秀樹氏がまず取り上げたのは、クラブが創設50周年となる“2041年”をどのような姿で迎えるべきか考え、2011年に発表した「ビジョンKA41」についてだ。
■鹿島アントラーズ「ビジョンKA41」
https://www.antlers.co.jp/spl/20th/ka41.html
鹿島は2008年から3年をかけて、クラブの置かれている環境や条件について調査。項目は1000以上に及び、専門機関への調査依頼、ステークホルダーやサポーターへのヒアリング、世界中のサッカークラブの視察などを通じ、精査した結果が明らかにされた。
その中で導き出されたのは、マーケットという点で他クラブに比べてアドバンテージがあるとは言えない鹿島地域において、現状に対処しているだけの経営では、存続していくことすら厳しいだろうという結論。
「創設50年の年、クラブはもうなくなっているかもしれない」
このショッキングな見通しが、今の鹿島アントラーズを作ってきたのである。
Jリーグは2017年に「Jリーグアプリ」をリリース。JリーグIDで統一して管理することにより顧客を可視化し、顧客体験の向上、クラブ・リーグにおけるビジネス機会の拡大を図っている。行く行くは日本サッカー協会(JFA)、さらには他スポーツと合わせて管理することで、より巨大で有用なデータベースを持つことも視野に入れているようだ。
鹿島がまず行ったのもこの“見える化”。どこにどのくらいのボリュームで自分たちの顧客がいて、どのようなことに興味を持っているのか。
商圏人口が少ないからこそ、デジタルなどを積極的に活用して成長を続け、「共存から競争へ」と環境が激変するJリーグの中で現在、売上100億円の“ビッグクラブ”を目指している。
鹿島は、クラブがJリーグから依託を受けて試合中継の番組制作を行っており、映像素材=ソフトが豊富という強みを持つ。またハード面においても、2006年からカシマサッカースタジアムの指定管理者となっているため、スマートスタジアム化でWi-Fi環境などを整備。利便性を高めることで来場者体験価値や収益の向上に繋げている。
コンコースを使った夏場のビアガーデンは素晴らしい取り組みの一つだ。試合のない日もファンがスタジアムに集い、楽しみながらクラブに収益をもたらしている。