「コミュニティ」を重視するLAギャラクシー

次に登壇したのは、LAギャラクシーのブランダン・ヘイナン氏。彼は現在ギャラクシーが行っているビジネスの概要にいて解説していったが、そのなかでまず印象に残ったのは、クラブとして「コミュニティ」を大事にしているということである。

勝利は当然最優先だが、感情的なコネクションがあれば仮にチームが負けてもファンは同じ道を歩いてくれる。

ファンの経験を高め、サッカーをプラットフォームとして地域に貢献していくことをクラブとして重視。マーケティングとしては「Performance」「Belonging」「Passion」「Culture」という4つの柱を立て、そこにデジタル戦略もうまく活用しているという。

現在展開しているキャンペーンの一つが『SINCE 96』だ。

1996年の初年度からMLSに参戦し、5度の優勝を誇るLAギャラクシー。その歴史を作ってきたランドン・ドノヴァンやデイヴィッド・ベッカム、ズラタン・イブラヒモヴィッチといったスター選手たちのプレーが、ファンが熱狂する姿とともに映像で紹介されている。

こうした「見て楽しめる」「見てかっこいい」プロモーションはソーシャルでの拡散性に繋がるため、ギャラクシーには現在3人のグラフィックデザイナーが在籍。デジタルチームだけでなく様々なところでファンとのビジュアル的なコミュニケーションに貢献している。

また、コミュニティに関して興味深かったのが、ギャラクシーはホームへの集客だけでなく、アウェイゲームにファンを連れていくことにも積極的だという点。アウェイツアーを組んだり、時にアウェイのチケット代をクラブが持ったりすることで、300~500人が遠征試合についてくるようになったという。これは、広大なアメリカにおいて4大スポーツ(NFL、NBA、MLB、NHL)が行っていない取り組みだそう。

後でヘイナン氏に話を聞いたところ、いわゆるサポーターの代表者たちと「Slack」でコミュニケーションを取ったりしているとのことで、このあたりの“繋がり方”はいかにもデジタルかつサッカー的。スタンドで両チームのファンが混ざり合いながら応援することが当たり前のアメリカで、新たなスポーツ文化が根付きつつあるようだ。

最後の質疑応答では、セレッソ大阪のスタッフから「他のスポーツがある中でどう差別化しているのか?」という質問があった。ロサンゼルスには実に12のプロスポーツチームがあり、大阪という大都市のクラブとしては気になるところに違いない。

ヘイナン氏は競合について、「ブランドの独自性、ストーリーを伝えることを重視し、自分たちならではの部分にお金をかけ、新しいものを作っていくことが大事」と答えている。