攻撃的な相手に効く『ファストブレイク』とは?

7月1日、伊賀がホームの上野運動公園競技場に迎えたのは、今季なでしこリーグ2部に昇格してきたバニーズ京都SC。

ただ、昇格組とはいえ、バニーズは就任5年目を迎えている千本哲也監督の下で最終ラインから丁寧に繋ぐパスサッカーを貫いてくるチームだ。

一方、伊賀はカップ戦再開から2戦連続の引き分けを喫したあと、前節からアンカーに今季バニーズから新加入した司令塔タイプのMF澤田由佳(上記写真:背番号5)を初先発に抜擢した。

得点を奪い切れない試合が続いたが、敵地での岡山湯郷Belle戦で0-4と完勝する。そして澤田は古巣対決となるこのバニーズ戦でも継続して先発起用されている。

バニーズのセンターバックコンビは開きながらボールを受けるため、攻撃から守備への切り替え時にスペースが生まれる。

前半の伊賀はそこを何度も突いた。1トップのFW小川志保や左ウイングのFW竹島加奈子がフリーで抜け出す場面も多かった。

相手がボールを持っている時ほど、ゴールへの最短距離の道は拡がっている。奪ってから速く――とは、バスケットボールで言うところの「ファストブレイク」である。

ただ、この日の伊賀は4バックとアンカーの後方部隊5人と、1トップ+2シャドー+両ウイングの前方部隊5人が分断。間延びしてオープンな展開になっていた。チャンスが多かったのは確かだが、逆にピンチも多かったのも事実だった。

伊賀は21分、華麗なパスワークから中央突破しMF杉田が先制点をあげたが、やはりというべきか直後の27分に失点を喫する。その起点はハーフウェイライン付近からの早いリスタートだった。

浅いDFラインの背後へ送り込まれたロングボールに、長い距離を走って抜け出したバニーズのMF林咲希が反応。GK井指楓の頭上を抜くループシュートが決まり、同点に追いつかれたのだ。

今季の伊賀は、ボールを失った瞬間から連動したプレスを激しく仕掛けていく。それによって相手チームにプレーする余裕や考える時間を与えず、相手陣内でボールを即時奪回することを目指している。

だからこそ<2-3-5>の前衛的なシステムが機能しているのだが、この日の前半は良くも悪くもVフォーメーション時代のような「古き良き時代のサッカー」になっていた。