替えの利かないジルーやマテュイディ

一番衝撃的なのは、本職のセンターフォワードがジルーしか居ないことだ。本来10番を背負っていたはずのカリム・ベンゼマがスキャンダルで代表から遠ざかり、アンソニー・マルシャルなどのセンターフォワード対応可能な人材が揃って代表を外れているからなのだが、なぜこのような歪な編成を組んでしまったのだろうか。未だノーゴールで、フランス国内でも懐疑論が上がっているこの9番の貢献度は実は低くない。彼のポストワークは絶品で、先述のパサー不在問題を誤魔化す「当てどころ」であるからだ。モンペリエでリーグ・アンを制した6年前から絶対的レギュラーとしてプレーしていない彼が今大会の最後まで持つのだろうか。怪我で出場不可能になった際のリスクマネジメントはできているのだろうか。どうしても筆者の脳裏にはアレクサンドル・ラカゼットの名前が残ってしまう。

マテュイディほどバランスが取れる人材も居ない。彼が累積警告で出場停止になったウルグアイ戦では、コランタン・トリッソが代役を務めたが、穴にならないように無難なプレーに終始するばかり。もっと早く下げられていても不思議ではなかった(実際は80分に交代)。そもそも、初戦で4-3-3のインサイドハーフで先発しながら、2戦目以降マテュイディにスタメンを奪われている時点で彼のプレーぶりには察しが付いていたのではないのだろうか。

彼らだけでなく、バンジャマン・メンディとジブリル・シディベがコンディション不良なのか戦力になっておらず、共に所属クラブではCBでプレーする機会が多かったリュカ・エルナンデスとバンジャマン・パヴァールが出ずっぱりのSBも不安要素だ。ほぼ1シーズンを棒に振ったメンディ、セレソン(ブラジル代表)メンバー入りを断念したダニエウ・アウヴェスと同じ怪我を負ったシディベはハナから難しいコンディションにあると事前にわからなかったのか。レイヴァンン・クルザワやリュカ・ディーニュ、さらにはサンテティエンヌで復活を遂げたマテュー・ドゥビュシーは今の状況をどんな思いで眺めているのだろう。

トリッソ、メンディやシディベに限らず、今回のレ・ブルーは余剰戦力が多すぎる。毎試合決着がついてから出て来るフェキル、ディディエ・デシャン監督直々に「トラブルを起こした」と言われたデンベレ、そしてデンマーク戦の数十分しか出ていないトーヴァンあたりは戦力と言えるのだろうか。そもそも、彼らにはスタメンのアタッカー陣に勝てる長所が見当たらない。フェキルに至っては王様体質の選手であり、彼に能力の最大値を発揮させるためには彼を中心にしたシステムに組み替えなければならない。ベンチに置いておくに適切なカードとは言えないだろう。ドイツ代表におけるレロイ・ザネ同様クラブでの活躍に囚われない処遇をすべきだった。