“エンバペとその仲間たち”への過剰な依存
最大の懸念は、替えの利かない選手の多さだ。エンバペに代わりがいないのは構わない。アルゼンチンのリオネル・メッシ、ポルトガルのクリスティアーノ・ロナウドやブラジルのネイマールに代役がいないのと同じだ。
しかし、あまりに頼り過ぎのように映る。彼が居ないレ・ブルーを想像してみよう。代わりに出てくるのはウスマヌ・デンベレだろうか。有望なのは間違いない選手だが、まだ成熟度に欠ける。縦にドリブルしてからのカットインシュートが主な武器だが、それ以外のプレーの幅はまだ広くない。できることの多いエンバペの代役は少々荷が重いだろう。ポジション的にはトップ下でグリーズマンとプレーエリアが被りそうなナビル・フェキル、序列がデンベレより低いフローラン・トーヴァンがデンベレより先に出てくることもないだろう。
パサー不在というチームの問題を解決しているのもエンバペであることを忘れてはいけない。類まれなそのスピードで、凡庸なパスもチャンスに繋げる彼が居なくなれば、中盤は構成自体を変えなければならなくなるだろう。陣容で最もパス能力の高いMFはステベン・エンゾンジだろうから、彼を入れるためにポール・ポグバかエンゴロ・カンテを外さなければならない。その決断が、デシャンにできるだろうか。そして、エンゾンジを入れたところで組み立てと崩しが大幅に改善することはあるだろうか。疑問は拭えない。アドリアン・ラビオを素直に入れておけば良かったのではなかったか、という後悔はせずに済むだろうか。
要するに、現陣容におけるエンバペの存在は異様に大きい。そして、彼だけでなく、脇役にも代えの利かない選手が多いのだ。