トレーニングは「ぶっちゃけなんでもいい」。神は細部に宿る。

日々のトレーニングでは、子どもたちがプロになった時に困らないようにしてあげるというフィロソフィーの下5つの主要要素を満遍なく鍛えることが大事な目標となる。「テクニック」、「フィジカル」、「戦術」、「メンタル」、「教育」だ。意外にも身体の使い方はテクニック、集中力はフィジカルに分別されるそうだ。

そして、この5つを満遍なく鍛えるようなメニューを組む。チームのレベルに合ったトレーニングを、テクニック練習、戦術アクション練習、ゲームの3段階に分けて組むのだという。メニューは指導者が適切だと思うものを組めばよく、氏曰く「日本でもよく売られているようなトレーニングメニュー本を参考にすればいい」のだという。大事なのは自分なりのアレンジであり、基本フィロソフィーである。あとは指導者の力量次第なのだ、と。

ここは意外だが、重要なポイントである。多くの人々は勘違いしているのかもしれないが、選手を劇的に伸ばすスペシャルなトレーニングというのは実は存在しない。ラファルグ氏の指導実践も、特別なことは何もしていなかったが、選手にいつ何を指導するのかがとにかく絶妙。熟練されたプロの技だというのは素人目に見てもわかるものだった。そもそもフランスではプロ選手を指導するコーチとは別個に育成コーチのライセンス制度も確立されており、育成コーチの専門性が高い。コーチ育成から綿密なのである。

近い目標、遠い目標

話を戻すと、「指導計画は年単位と週単位に区切って立てる」という。「まず1年で達成したい目標を立てて、次に週ごとに何をするべきかを考える」のだと。一般的な計画の立て方と同様である。

「年間計画は3ヶ月ごとに振り返り、進度に合わせて調整する」という。トレーニングの効果が出るのに一定の時間がかかること、ある程度ブレないようにすることを考えると3ヶ月ごと、というのが適切な期間なのだろう。

こうして一流の育成コーチによるきめ細やかな指導でのびのびと育てられた子どもたちは、2年の寮生活を経てそれぞれの新しいクラブに向かっていく。そして、彼らの中のおよそ30%が最終的にフランス国内のクラブとプロ契約する。ジュニアユースの育成においてこれは恐ろしく高い数字である。このパーセンテージにイングランドなど海外のクラブと契約した選手は含まれないので、それらを含むとプロ輩出率はもっと高い数字になる。

全世界に醜態を晒した「ナイスナの悲劇」から8年。レ・ブルーの復活を支えたのがINFを中心とする育成の力なのは間違いないだろう。日本でも、完全なコピーはしなくていいが、フランスのように確固たる哲学をもって一人一人の選手に丁寧に接する人々が一人でも増えればもっと強い日本代表が見られるのではないかと感じさせられる講習会であった。言うは易し、行うは難しではあるが…。

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