長所を伸ばせ
INFの大前提は当たり前だが、「強いサッカー選手を育てること」である。そして、そのために「『大人になった時に困らない』ように未来から逆算して現在において何をすべきか、というのを深く考えて基本指導指針を練るのだ」と氏は力説する。
まず、プロになった時に困らないように何をすべきかといえば「選手自身の思考力を育てること」だという。「サッカーは日々進化していくので、いつまでも同じプレーは通用しない。フィジカルの変化にはその時の鍛え方次第で対応できるが、時代の変化に対応できるようには若い頃からしっかり思考力を鍛えなければすぐに時代に取り残される」という理由からだ。思考力がサッカー選手にとって最も大切な能力であると考えているのだ。
では、どうやってINFでは選手の思考力を育てているかというと、「問題の原因を選手自身に発見させ、解決策を考えさせること」だという。
日本でもよく言われている話ではある。しかし、指導者の力量が問われるのはここだ。INFの指導者は選手がミスした時に怒らず、大らかに接し、子どもが話しやすいように対話を試みるのだという。簡単そうに聞こえるかもしれないが、実際にやったことのある人はなかなか難しいとわかるだろう。「子どもは基本的に恥ずかしがり屋で、話したがらないものだ」と氏は言っていた。子ども=元気いっぱいという固定観念から我々はどうしても子どもはおしゃべりなものだと思いがちだが、実はそうではない。
少しでも簡単になるように、氏のレジュメに書かれていた言葉をここで一つ出しておこう。
「あなたがだれかと向き合う時、彼の欠点を除こうとしないで、彼の長所を伸ばそうとしなさい。長所を伸ばしながら、あなたは彼の欠点が消えて行くのを目にするでしょう」
かの三島由紀夫を高く評価していたというフランスの小説家マルグリット・ユルスナールの言葉である。