弊社がハリルホジッチ監督就任時に出した原稿を見るに「つまらない、チームの構築に時間がかかる」ということを記載していた。
リール時代からハリルホジッチ監督のサッカーは決して面白みがあるものではなく、また選手を凄く選ぶもので戦術構築に時間を要した。リールでは2部にいたチームをリーグアン上位に導き、中田英寿擁するパルマをチャンピオンズリーグの予備選で下すなど日本でもインパクトを残した。だが、当時の選手たちはその後のビッグクラブでは活躍しきれなかった。ハリルホジッチという監督の戦術は彼の戦術上で輝く駒であり少し特殊なものである。
そして、一方でスター選手でも容赦なく外す。アルジェリア時代もキャプテンのマジッド・ブゲラをワールドカップ中にスタメンから外しているし、調子と自分の戦術に合わない、従わない者へは厳正な対処を行う。
そう考えるとハリルホジッチのチームの完成形は「決して有名な選手が必ずしも出場するわけではなく」、「面白くはないが」、「決勝トーナメントへのチャンスをハリルホジッチ的には最大限突き詰めた」というものになるだろう。つまり、本大会で結果を残す以外は全て捨てているのだ。その点において、ハリルホジッチ監督と選手、協会とのコミュニケーション、共有はどれほどなされていたのだろうか。
一方で、田嶋幸三会長のいう「1%でも2%でも勝つ可能性を追い求めたい」という言葉はあながち間違いではない。多くの国は本大会前にチームの練度を大きくあげるからだ。予選と本大会は別のチーム、ということは珍しくない。監督解任で分析情報が0になるわけではないだろう。協会のサポートで引き継げる部分も多くあるはずだ。だから、私は2か月という期間は短いとは思わない。
ただ、日本らしいサッカーといってパスサッカーを割と重んじた2006年W杯も2014年W杯もグループリーグで敗退している。それは本当に“強み”なのだろうか。
W杯でベスト16に進出した2002年、2010年は守備の側面が大きく取り上げられた。トルシエJAPANの「フラット3」はその最たるものだ。私は日本の強みはむしろ“おしん”のように耐えてカウンターにかけることをチームでできることだと思うのだ。それこそロンドン五輪だって永井のカウンター戦術がはまったではないか。
日本らしいサッカー=パスサッカーというのは幻想のようなものだ。ハリルホジッチ監督が取り組もうとしたゾーンディフェンスやデュエル、ハイプレスといったキーワードはむしろ守備を強化するものであり、その完成形を見るチャンスを逸したことは非常に寂しいものだ。
(編集部Q)