<2ndレグ敗因>泥臭いセンターバック不在のPSG

一方、4-0での勝利により、パリではほとんどベスト8進出を決めたも同然という空気が流れていた。リーグ戦での不調により批判を浴びていたエメリ監督を再評価する風潮も出てきており、1stレグでディ・マリアが負傷交代していたことなどすっかり忘れられていた。しかし、この負傷交代が悪夢の始まりとなる。

ディ・マリアが負傷したのに続き、約1ヶ月の間にドラクスラーも、チアゴ・モッタも、ラビオも戦線を離れたのだ。そして、2ndレグを迎える頃、アンカーで状態のいい選手は誰も居ず、ウイングもサイドバックも同様、という状態に陥った。そして、カンプ・ノウでとんでもないことが起こる。

奇跡を起こさせてしまった要因はいろいろある。しかし、一番の原因はエメリ監督の移籍市場での振舞いだったと言えるだろう。ローラン・ブラン前監督時代から指摘されていた、大一番で負傷者を出す癖を、エメリ監督はさらに悪化させた。スペイン出身のエメリ監督は、フランスとスペインのカップ戦数、ひいては試合数の差を無視してスペインのチームのように少数精鋭部隊を編成。これがコンディション不良や怪我人続出を生んだことは言うまでもない。移籍市場では特にセンターバックを獲得するという噂もなく今シーズンをスタートさせてしまったのだ。

ー何故、ダヴィド・ルイスを放出したのか?

また、戦術遂行能力を重視しすぎてフィジカル能力を軽視したことも看過できないミスだ。エメリ監督は、リーグ・アンというフィジカルな戦場で戦う事を考えていなかった。フィジカル能力は高いが、戦術的にしばしば無秩序な動きを見せるダヴィド・ルイスの放出はその最たる例。彼がいなくなったPSGは、すでに昨季トータルより6も多い失点を記録している(昨季は13失点、今季は既に19失点)。彼がいれば悪夢の2ndレグも乗り切れただろう。押し込んできたバルセロナの全6得点で、完全に崩された得点はゼロだったのだから。なりふり構わず攻めてきた泥臭いバルセロナを、泥臭く跳ね返せるDFはPSGからすでに去っていた。この試合のPSGのタックル成功率はわずか57%、この値は1stレグよりも20%低いものだ。

さまざまな不運もあっただろう。しかし、結果を覆すことは不可能だ。おそらく、エメリ監督の首は夏までには飛ぶだろう。ブランが作り上げたチームに、マイナーチェンジを加えれば欧州の頂にたどり着く可能性は十分あったし、それがエメリ監督に託された使命だったが、残念ながら彼はチームを後退させた。新しい監督の下でリスタートを切る格好になりそうだ。

ポジティブな要素は、次代を担うラビオ、クリストファー・ヌクンクなどの下部組織出身者がこの大敗を目の当たりにしたことだろう。未来はある。きっと、リベンジの機会は訪れるはずだ。ここを耐え抜ければ、きっと欧州ナンバーワンにもなれるはずだ。その時が来ることを信じて、今は悲しみを消化するしかない。

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