サイクルが終わりつつあるスペインとウェールズの躍進

その大国と小国を象徴したのが、スペインとウェールズ。EUROを連覇し、ワールドカップも優勝。長い期間、世界のサッカーをリードしてきたスペインは、グループステージでクロアチアに敗戦。2位で進出した決勝トーナメントのベスト16でイタリアに0-2で敗れ、姿を消した。

チームサイクルの終止符が近づいてきたと言えるが、その大きな原因はリーダーの不在だ。「シャビやシャビ・アロンソという真のリーダーがいなくなった。彼らは常に勝利に飢えていたし、中盤をコントロールする必要不可欠な選手だった」とヴェンゲル監督。

彼らを欠くことで、どんなに素晴らしい選手が他にいても、リーダーが抜けただけで、平凡な選手、平凡なチームになってしまったと言う。「ピッチ上の11人の選手は一人一人が能力の高い選手なのに、チームとして戦うには何かが足りない。まさにスペインはそういうチーム状態だった」。

一方、2人の監督に驚きを与えたのはウェールズだった。その強さの秘密は守備だ。「アレン、ラムジーとベイルの3人だけがプレーして、残りの7人は守備に励んで働いていた。とくにラムジーに関しては、あまり知らない選手だったが、本当に素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた」とハリルホジッチ監督。

ヴェンゲル監督はそれを独特の言い回しで表現した。「ロケットを作る様なチーム作りができた。パーツごとに細かくチームを作っていき、ラムジーからベイルにボールが渡るようにチームが作られて成功した」。

もちろん、エースのベイルのプレーも見事だった。ハリルホジッチ監督は、「ベイルは優れた個の能力をチームのために活かすことに励んでいた。もし、ラムジーが準決勝のポルトガル戦に出場できていたら、展開は変わっていたと思う。あの試合では、ラムジーが不在だったため、ベイルが低い位置まで下がってラムジーの仕事をしていたように見えた」。

そして最後にもう一度、「ラムジーがいたら…」とつぶやいた。

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