昇格組のスピードと精神

「代表チームの話を」と述べておきながら、さっそくクラブチームの話をしてしまうあたり、私は物書きとしてまだまだ未熟である。しかし、このトピックにはユーロでイングランドが飛躍するヒントが隠れている、と私は考えている。

近年の国際化した英国フットボールシーンにおいて、圧倒的な戦力差があったニューカッスル・ユナイテッドとウェストハム、そして昨季のQPRなどを除けば、わずか1年でプレミアへとカムバックを果たした降格チームは極めて少ない。これは、彼らが2部に相当するチャンピオンシップ以下のクラブにとって、ある程度“倒しやすい”側面があるからであろう。

私はある程度、過去を美化しがちな懐古主義者であると自己を分析しているが、声を大にして述べたいのは、イングランドの“シンプルかつ縦に早いスタイル”というのは、国際的には異端であり、非常に相手にしづらい、ということである。

「“フォーメーション”とは単なる記号であり、言語に過ぎない」という考えには私も賛成する。しかし今季のプレミアリーグにおいて、属性的にストライカータイプの点取り屋(攻撃以外のタスクも背負うモダンなロールタイプを指す)たちが最前線に並んでいる状況が、多くの成功を収めていることは、もはや反論の余地を残してはいない。

革命家ジョゼップ・グアルディオラによって、世界を席巻した手の込んだパスサッカー。国際化した支配的なシステムや戦術に“汚染(言葉は悪いが)”されたのは、英国のトップリーグも例外ではなかった。

しかし、2部リーグ以下には未だ多くのイングランド・スタイルを敷いたクラブが存在する。昨年の6月の時点で、我々はAFCボーンマスのプレーヤーを何人知っていただろうか。ワトフォードではオディオン・イグアロとトロイ・ディーニーの2トップがメガクラブの守備陣を恐怖に陥れ、2シーズン前まで2部にいた“おとぎ話”を綴り続けるレスター・シティの成功は誰の目にも明らかであろう。

フラットな4-4-2を基本的なポジショニングと捉える英国独自のフットボール・スピリットは、確実に幼少期から英国少年の内に根付いている。彼らが歳を重ね、どの文化に触れようが、馴染みのいいフットボールとはキック&ラッシュの文化を引き継いだものであろう。

人種の坩堝と化したプレミアのクラブレベルにおいて、私はこれを強要するつもりは毛頭もないが、イングランド代表であれば、話は違う。

かつて、プレミア勢は欧州の舞台で信じられないほどの結果を手にしていた。2010年5月、アトレティコ・マドリー相手に延長戦の末敗れたものの、ヨーロッパリーグ決勝の舞台ハンブルクのピッチに立っていたのは、フルハムのイレブンであったことを思い出してほしい(彼らは現在2部で19位)。

一律化したフットボール、もはや英国でも大衆派となった世界の“負けないフットボール”に対し、彼らも無論“イングリッシュ・フットボール”の1つとして存在感を放っていた。

ドイツやスペイン、ベルギーや開催国フランスにはメンバーで見劣りするイングランド代表であるが、私は今大会に十分な勝機(ドローが当たればセミファイナル進出くらいは…)があると踏んでいる。そして、おそらくこの考えにはリオ・ファーディナンドもある程度同意してくれるだろう。

スリーライオンズのスカッドは、完全に“悪くない”。

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