ポジション

まずはよく言われるポジション論争だ。

ゲッツェが代表で起用されるときは多くの場合中央である。中央ということはつまりポジションが決められていないということで、FWであろうがトップ下であろうが試合中ゲッツェは右へ左へとボールのあるところに寄っている。

ゲッツェは元来ボールを受けるのが上手い選手であり、相手選手間で受けさせるためポジションを固定させないというのは非常に賢明な判断だ。

タイプとしては今更言うまでもないような気がするが、日本代表の香川真司に似ている。ボールを何度も受けながらポジションを取り直し、自分のリズムを作っていく。ポーランド戦、スコットランド戦でも小気味よいタッチでボールを扱い、ゴールも決め、気持ちよさそうにプレーしていた。

それが所属クラブのバイエルンだとどうか。

今季は幕を開けて間もないため、昨季を思い返してみよう。ゲッツェは得意の中央のポジションではなく、左ウィングの選手として扱われた。

それはバイエルンの台所事情に強く影響されたものだった。ロッベン、リベリーといういわゆる生粋のウィンガーが怪我で離脱したため、ゲッツェにその席が与えられた。ゲッツェは確かに左に開く癖があり、ドリブルも決して下手ではないがサイドの選手ではない。

グアルディオラがロッベン、リベリーのようなドリブルで局面打開を期待していたのだとすれば、愚の骨頂だ。香川真司がマンチェスター・ユナイテッドで失敗したケースと似ているかもしれない。

結果としてゲッツェはボールが来て仕掛けても抜ききれず、バックパス→ボールが集まらなくなる→ボールに触れるため、中央に行き中が渋滞する、まさに負のスパイラルであった。

そのためバイエルンは生粋のウィンガー、ドウグラス・コスタを獲得するのだが、それは後で触れよう。

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