本当の「ホーム」であるために

そして、こんな長くて遅いコラムの最後ですが、残念な話を一つ書かせて下さい。

試合終了直後から、埼玉スタジアムには激しい雨が降り「続いた」ようです。カギカッコの意味は、シンガポール側の記念撮影と、日本代表への強烈なブーイングを背にしながら、私は他の記者達より少し遅れて両監督の記者会見場に向かったので、照明ではっきり分かる雨筋を見ただけだったからです。それから両監督の記者会見が終わり、公式記録をいただいてからスタジアムを出た22時50分には、傘を差さなくとも良い程度しか降っていませんでした。

この雨が非常に強かったのは、その後のいろいろな状況で分かりました。普段の試合ならさすがに閑散とする23時台でも、浦和美園駅には多くの観戦客が改札を通るために長い行列を作っていましたし、撤収作業をするスタッフや警備員の皆さんも「とにかくすごい雨だったんですよ」「お客さんはみんなずぶ濡れになってしまってかわいそうでした」と教えてくれました。

この日のアメダスデータを見ると、さいたま市(浦和)の観測点では全く降らなかったのに、スタジアムの北側になる久喜では20時までに23ミリ、21時までに48ミリの激しい雨が降っていました。その一部が南下したのでしょう。確かに仕事をしていたのですが、それを実感せずに帰っている私がこれを書いて良いのか、迷いました。

しかし、それでも、道端に散乱する青い旗の残骸は無残なものでした。暗い中でも、駅までの道中で数百本は見ました。

このシンガポール戦コラムの最初、「その1」の冒頭に入れた写真には、この日の来場者全員に日本サッカー協会が配った青い小籏と、記者控室に置いてあるフリードリンクのペットボトルを入れました。籏には3次予選の全試合日程が書き込まれ、この後の試合でも使える、あるいは観戦の記念にもなるグッズです。

快勝スタートのはずが引き分けた試合結果への落胆はあるでしょう。30分以上もの道のりで豪雨に降られてどうにもならない人もいたはずです。

しかし捨てるのなら、ビニール袋に入れて持ち帰るか、せめてスタジアムの指定場所に集めて欲しかったです。特に敷地外は運営責任者の手が届かず、地元の住民の皆さんが毎日使う生活道路の一部が汚されたままになってしまうからです。

改めて、この日に配られた「SAMURAIBLUE」の小籏を。下は試合中に飲みきれなかったキリン提供のフリードリンク。

その不満を持ちながら着いた浦和美園駅で待っていたのは、改札口へ上がる階段の1段目が、脱ぎ捨てた雨合羽やビニール袋などで半分以上埋まっている「ゴミだまり」でした。

日本代表が海外で試合をすると、サポーター達がスタンドのゴミ拾いをする姿が現地のメディアから称賛されるのは、近年の定番でした。このQolyでも、関連するいくつかの記事が紹介されています。

『W杯で世界から賞賛された日本サポーターのスタジアムでのゴミ拾いを現地ブラジルクラブがマネする』
https://qoly.jp/2014/09/15/atletico-pr-supporter-adopt-japanese-fans-clean-up-stadium

『W杯で称賛された日本代表サポーターの「ゴミ拾い」、地元に根付いていた!』
https://qoly.jp/2015/05/19/internacional-supporter-adopt-japanese-fans-clean-up-stadium

しかし、「一部の入場者」は、そんな基本マナーすら無視したようです。その結果が、あの惨状。

相手が「厳しすぎるほどの国家統制で非常にクリーンな社会」を作っているシンガポールだったことも含めて、この日最大の敗北感をここで覚えました。

ロシアを目指す日本のホームゲームは2次予選であと3試合、3次予選は5試合あります。

好成績は当然ですし、それはハリルホジッチ監督や選手たちに任せるだけですが、スタジアムに集まるサポーターも、テレビなどで応援する皆さんも、胸を張って「世界の一員」として、2018年に出場してもらいたいと願っていますし、私がそのお役に立てればとも考えています。

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