昨年のワールドカップで洗練された戦いぶりを見せつけて見事24年ぶりに世界制覇を成し遂げたドイツ代表。 その偉業を秘かに支えていた人物がいたのをご存知だろうか。アメリカ人トレーナーのマーク・ファスティーグン氏である。
アリゾナ州フェニックスにあるプロアスリートのトレーニングなどを行う『EXOS』の創始者であり会長でもあるファスティーグン氏は2004年当時の代表監督ユルゲン・クリンスマンから指名を受けてドイツ代表のトレーナーに就任。 当時のドイツは低迷期にあり、選手たちのフィットネス、アジリティ、栄養学、反発力を向上させるために同氏は招かれたののの、当初は地元ファンやメディア、そして幾人の選手からも疑いの目を向けられていたと自ら語っている。 「彼らはアメリカ人たちに何が教えられようかと疑問だった」と。
だが、今はもう彼のトレーニングメソッドに対する懐疑論者は皆無となった。同氏がドイツ代表の選手たちに施したトレーニングなどに迫った『New York Times』のインタビューを紹介する。
Q. チームが街から街へと旅することになった今ワールドカップにおけるドイツ代表のトレーニングのロジスティック(論理学)はどんなものでしたか?
A.
「私達は非常に驚くべき移動トレーニングキャンプを張りました。4000~5000平方フィート(371~464平方メートル)の構造物をピッチに隣接して組み立てたんです。最新の心肺機能向上用マシン、ウェイトやフィットネスや回復用の器具、処置を行うベッドなどを収容できるものです」
Q.そのような施設内で行うワールドカップのトレーニングの典型例はどのようなものですか?
A.
「次の試合までどれくらい近いかによります。ただ、私達は施設を通常4つのステーションに分けていました。それぞれのステーションごとに違うエクササイズを行うミニサーキットに。 ひとつのステーションでは T-Hip Rotationsエクササイズのようなことを選手にさせたり、 ほかでは Mini band lateral walkを。太ももか足首にバンドでしばって、横に歩くものです。
2004年にこれを選手にやらせた際、私達は馬鹿にされました。しかし、腰(臀部)の安定はサッカーにおけるパフォーマンスや怪我の軽減に不可欠です。今では誰も笑うことはなくなりました」
Q.施設内でのセッションの後は何を?
A.
「チームはフィールドに出て、多くのドリル(反復練習)に取り組みます。アジリティ―や加速(力アップ?)に取り組んで、パワーを構築します。選手たちに横や交差するスプリント、ドロップスクワット、パラシュートやバレットベルトを装着してのランニングをさせます。その後、ボールを使った技術的、戦術的なトレーニングに取り組みます」
Q.これらのセッションはあなたが加わる以前のドイツ代表のトレーニングとどう違いますか?
A.
「(かつては)技術的、戦術的な要素により重点を置いていました。フィジカルトレーニングは多くの長距離走を取り入れたひどく一般的なものでした。今でもまだ選手たちは技術的、戦術的なトレーニングに多くの時間を割いています。しかし、フィジカルトレーニングはより集中的に、個別化されました。
私たちは選手の運動パターンを絶えず評価しています。例えば、選手たちのすべてのエクササイズを観察するなど。正確さは非常に重要です。もし選手たちがある日に限って動作が少し落ちていたら、すぐに修正します。それはコンピューターにアンチウイルスプログラムを実行させるようなものです。ゴミを取り除いて、動作を正しいものにし続けるように」