2007年、川島永嗣の補強を振り返る

「川崎の補強ポイントはGK」と明確に定まっている状況、古くは2006年がそうだった。

古くからの川崎サポーターなら記憶していると思うが、この時の川崎はジュニーニョ・我那覇和樹・マギヌンら強力アタッカー陣の大活躍と谷口博之の得点力でリーグ2位という好成績を残す。

ただし、DF陣は伊藤宏樹、箕輪義信、寺田周平の通称「川崎山脈」で見事な壁となったが、GKは相澤貴志と吉原慎也の二人とも安定感がなく、どちらも正GKとして務まらず入れ替えが起き、得点を重ねるもそれ以上の失点で落としたゲームもあった。

そのため、2006シーズン終了後、2007シーズンに向けてサッカーダイジェストら各サッカー雑誌における「J1補強動向・補強ポイント」の特集号においても川崎の補強ポイントは「GK」と明確に書かれていた。

「補強が必要なのはGK」と書かれる事実は重い。

FWやMFならば層の厚さが求められるし、連戦の中でローテーションが行われるため「FWが補強ポイント」=「今のスタメンFWが実力不足」ではない。

しかし、GKの場合は頻繁にスタメン入れ替えをするポジションではないためフィールドプレーヤーと明確に異なる。そのため、「GKが補強ポイント」=「今のスタメンGKが実力不足」という意味になる。

なお、2007年の川崎においては、守護神として名古屋グランパスから川島永嗣を1.5億円の移籍金を払い獲得した(これは当時の川崎としてクラブ史上最高額)。この補強は大当たりとなり、川島は前述の相澤・吉原とは格の違うプレーを見せつけて正GKとして君臨することとなる。

GKの補強は3パターン

今回も2006年の状況と似ており、今年もしくは来年には実力あるGKの補強がマストだと認識している。では、誰を補強するのか?ざっくり分けると以下の3パターンとなる。

(1)国内から補強
(2)Kリーグから韓国人GKを補強
(3)東ヨーロッパから補強

(1)の国内から補強はムリと思った方が良い。今のJリーグにおいて有望なGKはクラブ側がまず出さない。出すなら海外移籍だけであり、国内のライバルには移籍させない。

(2)はかなり現実的で、それこそ9年前にソンリョンを韓国から補強した時の再来とも言える。一時期、Jリーグにおいても多くのクラブが韓国人GKを補強したことにより席巻したが、自分も韓国人GKへの信頼は厚い。

その背景としてKリーグは外国人GKが禁止されており、自国の選手のみ登録可能となっているためだ。そのため、KリーグおよびACLで経験を積んだGKをヨーロッパや日本代表選手に比べれば安く補強できる。

(3)の成功例としては、元ジュビロ磐田のクシシュトフ・カミンスキー、元ベガルタ仙台・FC東京のヤクブ・スウォビィクといったポーランド人GKだ。彼らは本当にシュートストップがうまかった。年俸的にも移籍金的にも、西ヨーロッパに比べればリーズナブルのためJリーグクラブでも払える。

今回、川崎は約10億円の賞金を手にし、それをそのまま全て補強費に使えるわけではないが、それでも通常よりは補強予算がある状況。

現在の韓国代表GK陣は皆、国内メンバーだ。蔚山のチョ・ヒョヌ(33)、大田のイ・チャンギュン(31)、光州のキム・ギョンミン(33)が候補である。金泉尚武に在籍中のキム・ドンホン(28)は兵役中のため難しいか。もしくはポーランド等の東ヨーロッパから実力あるGKを補強してくる可能性もある。

チョン・ソンリョンはここまで大きな貢献をしており、Jリーグの中で歴史に残る素晴らしいGKの一人。ただ、さすがに40歳という年齢による衰えは隠せないのは事実。

前述のカミンスキーもスウォビィクもシュートストップ技術は素晴らしく、多くのサッカーファンの記憶に残ったが、やはり晩年は一気に衰えが出て、失点を重ねる姿やキック精度の乏しさで致命的なミスを起こしたのも事実ではある。

GKなのに「おもしろ背番号」だった守護神たちとその理由

リーグを4度優勝し、ACLEで決勝まで進出したクラブの正GKが定まらない状況はあってはならず、強化部も確実にここは補強ポイントと認識しているはず。誰を補強するのか。とても興味深い。

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