自分にベクトルを向ける負けん気の強さ

身長165センチと小柄な背番号21だが、身長178センチの山形FW藤本佳希に空中戦で挑むシーンもあった。一見ミスマッチに見えるが、アクションを起こせば何か起きるかもしれないという負けん気の強さで不得手なエアバトルにも積極的だった。

山形FW藤本(右)に空中戦を挑む鮎川

そんな負けん気が強い男だからこそ、シュートゼロ本は非常に悔しい結果だった。質のいい動き出しでパスを呼び込もうとしたが、自身が望むタイミングのボールはなかなか供給されなかった。我が強いストライカーはパサーに責任転嫁をすることも多々あるが、背番号21は自分自身にベクトルを向けている。

「ボールを呼び込む回数は増やさないといけないと思いました。味方の選手がちょっと苦しい状態でボールを持っているときに、もう少し助けるような動きが、きょうは少なかったかなと思う。そのあたりがもう少し必要ですね」と冷静に自分のプレーを見つめ直していた。

監督記者会見で指揮官が語った「このゲームを糧にしてほしい」という期待の声を耳にせずともミックスゾーンで実践している男は、冷静さと向上心を併せ持っている。大分、そして広島を背負おうと進化の過程にいる鮎川は、自身が成すべき努力を理解している。

「きょうもシュートがなかったので、そういう部分は自分が生きていく中で、ゴール前(の動きの質)が絶対必要になってくると思う。そこはきょうできなかったところなので、そこを改善して動きの部分を突き詰めていきたいと思います」と前を見据えた。

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武者修行中の若きストライカーはいま巨大な壁に何度もはじき返されながらも、必死に越えようとしている。課題を克服して成長を果たし、4シーズンぶりのJ1復帰のピースになってみせる。

(取材・文 高橋アオ)

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