[第59回関東サッカーリーグ1部第1節、VONDS市原FC 3-0 日本大学N.、4月6日、千葉・ゼットエーオリプリスタジアム]
関東1部2連覇のV市原は3-0で日本大N.に快勝し、開幕白星スタートを切った。
主将DF渡辺広大はセンターバックでフル出場。前半は相手に押し込まれる展開が続いたが、得意のヘディングでロングボールをはね返し続けた。
スコアレスで迎えた後半17分にDF谷口智紀がコーナーキックのこぼれ球を押し込み先制。勢いに乗ったホームチームは同25分にFW加藤勇司ベサーナ、同28分にMF鬼島和希がそれぞれ得点を奪い、ゼットエーオリプリスタジアムに集まった633人の観客を沸かせた。
しゃべれ、しゃべれ。JFL昇格への想い
JFL昇格を目指すVONDSグリーンの新シーズンが始まった。
昨季は関東1部を2連覇したほか、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ2024では2位となり、JFL最下位だったミネベアミツミFCとのJFL・地域入れ替え戦を戦ったV市原。2年連続の入れ替え戦に『今年こそは』と臨んだが、試合は1-0でミネベアが勝利し、辛酸をなめていた。
敗戦の悔しさを知る渡辺は「本当にあと一個だと思う」とJFL昇格に向けて足りないポイントを挙げた。
「あと一個なんです。守備のときに一歩戻るとか、攻撃だったらあと一歩中に入っていれば点を取れたのにとか。そういう部分は練習でしか突き詰めることができない」と、クラブは気持ちを新たにして1月20日の始動日から進んできた。
合言葉は『凡事徹底』。この日の試合前には伊澤篤監督が選手たちにこの言葉を贈り、イレブンは「JFL昇格しかないぞ」と不退転の覚悟でピッチに立った。
前半の立ち上がりはシンプルな裏抜けから相手ゴール前に侵入したV市原だったが、得点につながらず。徐々に主導権を握られ、守備の時間が続いた。
センターバックとして出場した背番号5は「自分たちは身長の高い選手が多くて、ストロングはセットプレーの部分です。だからこそ、そこにどれだけいい形で持っていくかが大事ですし、それはキックオフと同時にできないといけなかった」と反省点を口にした。
なかなか得意の形で攻められずにいたV市原だったが、渡辺を中心に気迫あふれる守備で相手の猛攻を防いだ。背番号5は得意のヘディングで何度も相手のロングボールを跳ね返すと、プレーが切れる度に「しゃべれ!しゃべれ!」「魂!魂!」とチームを鼓舞し続けた。
渡辺の熱い想いが実り、後半17分にV市原は先制点をゲット。左コーナーキックのこぼれ球に反応したイレブンのシュートは2度もゴールポストに阻まれたが、最後は谷口がボックス内での混戦を制し、右足でシュートを突き刺した。
「(得点を)一個決めれれば、絶対に自分たちの時間がくると信じていたので、後ろはゼロで抑えるこことだけを意識していました」という主将の言葉通り、谷口の決勝点を皮切りに攻撃が爆発。同25分と同28分には、いずれも左サイドからのクロスが起点となり、2得点に結びつけた。
試合はそのまま3-0で終了。降雨もかかわらずスタジアムに訪れたサポーターたちは、V市原の勝利を祝福するチャントを歌った。
駆け付けたファンと喜びを分かち合い、悲願のJFL昇格に向けて好発進したにもかかわらず、渡辺の笑顔は少ない。V市原のキャプテンは「天候がイマイチだった中でも600人を超えるサポーターが観に来てくれたので、非常に感謝しています。ただ、観に来てくださる方にはもっとゴールを観せたいという気持ちです。
いろいろな活動を通じて、もっと、もっと来ていただけるように努力したいですし、みんなで練習からいい要求をし合いたいです」と、VONDS市原はまだまだ成長できる。
V市原は次節、今月13日午後2時から流通経済大学龍ヶ崎フィールドで流通経済大ドラゴンズと戦う。
さらなる高みを目指す38歳は「もちろん優勝、昇格しかない。それをみんなで口に出して言って、言霊にしていく。そして去年の壁を越えて、すばらしい景色をみなさんと共有できるように頑張ります」と、今度こそ言霊を実現してみせる。
(取材・文・写真 浅野凜太郎)