明治安田J1リーグは週末に第7節が行われ、ファジアーノ岡山がホームで横浜F・マリノスを1-0で下し、4試合ぶりの勝利を掴んだ。
両チームの激しい攻防戦を動かしたのは後半22分、右サイドからのコーナーキックのこぼれ球をルカオが押し込み決勝点。J2時代からのホーム戦無敗記録を10に伸ばした。
岡山の良さが光った試合だった。シャドーの江坂任、木村太哉、ウイングバックの加藤聖や松本昌也が繰り出すサイド攻撃と、重戦車ルカオのキープからの速攻などで、今季堅守が光っていたF・マリノスの守備陣を翻弄した。
守備面では人に向かっていくハイプレスと粘り強い最終ラインの守備でクリーンシート。ただ、背後へのロングボールから決定機を作られる場面があり、コミュニケーションが足りなかったと感じた。
また、守備陣形をマンツーマンにして対応するため、遠野大弥のように縦横無尽に動くプレーヤーのマークに手こずるなど多少の課題は残した。だが、オリジナル10の一角である強豪相手に堂々のプレーを見せた。
とりわけこの日の鍵を握ったのがコーナーキックである。今節含めて挙げた6得点のうち、実に4得点がコーナーキックからという数字から見ても分かるように、非常にセットプレーを得意とするこのチーム。
この試合では前半の時点ですでに5本のコーナーキックを得ており、マンツーマンを形成し、ルカオに対して2枚のマークをつけるF・マリノスが空けたニアサイドに蹴り込むことが多かった。
この時点で、F・マリノスのマークに少しズレが生じており、前半6分のコーナーでは、アンデルソン・ロペスに当たったルーズボールを立田悠悟がサイドネットを揺らす惜しい場面も見られたりと、セットプレーがこの試合のキーポイントだったことは明白だ。
その中で生まれた後半22分の右コーナーキック。前半の5本のコーナーは全て右から。ただ、このシーンのキッカーはここまでの5本全てのキッカーを担ったレフティの加藤聖ではなく、後半から投入され再三好機を演出していた右利きの神谷優太。
神谷はコースを前半まで狙っていたニアではなく中央に蹴り込んできた。前半ではインスイングのボールに対してゴール前に走り込んできていたターゲットプレーヤーが、アウトスイングのボールに反応するべく中央に密集したことで、マークをうまく剥がした工藤孝太のヘディングからのこぼれ球をルカオが押し込むという得点につながった。
前半と後半でコーナーキックをうまく使い分けた点で、セットプレーの戦術の幅広さが窺えた。現時点で上位争いに足を踏み込む岡山。ここからの戦いに期待がかかる。
F・マリノスからしてみれば、連戦初戦となるこの一戦は勝利で飾りたかった。前半は遠野大弥と植中朝日を中心にチャンスを作り、前半終盤には朴一圭のパスからヤン・マテウスが決定機を迎えるなどチャンスは作ったが、ラストパスとシュートの精度に悩まされた。
また注目ポイントの1つであった負傷明けのトーマス・デンもなかなかパフォーマンスの質が上がらないまま後半途中に負傷交代。苦いF・マリノスデビューとなった。
ただ、右サイドバックにコンバートされた宮市亮や今季コンスタントに出場機会を得ている山根陸、今季加入で主軸を担う遠野のコンディションが上向いてきたのがこの試合であらためて得た好材料である。
この試合含めここ数試合少し心配なのが、持ち前のスピードと突破力で幾度となくチームを救ってきたヤン・マテウス。26歳のブラジル人FWは2022年に加入して以降ウイングで絶対的地位を築き、サイドからドリブル突破によるチャンスメイクが目立っていた。
しかし今季は守備のタスクが増えたことに加え、戦術上中央に絞ってプレーすることが多くなった分、本来のプレーを発揮できておらず、ボールロストが目立っている。
昨季リーグで3番目のチャンスクリエイト数を誇るヤン・マテウスの不調による影響は決して小さくないはずだ。連戦が続く中、彼のコンディションが上がってくればチームの士気も上がっていくだろう。ここからに注目だ。
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4月2日(水)に行われる次節、岡山はアウェーでセレッソ大阪と、F・マリノスも同じくアウェーで名古屋グランパスと対戦する。