色あせなかった仙台大の絆
一方で後半18分から左ウィングで途中出場した松尾は後輩との再会に「(嵯峨は)ちっちゃかったっす。縮んでいました。だから見えなかったです。気がついたら前にいました」と独特な松尾節で後輩をイジっていた。
試合前、松尾にあいさつをした嵯峨は「試合前も階段のところで(松尾に)ごあいさつしました。相変わらずいい先輩だなって(笑)。『いたの?』といわれて相変わらずな感じです(笑)。あのフワッとした感じは変わらずだったので、『変わらないな』と思って楽しかったです」と独特なキャラクターに笑みをこぼしていた。
報道陣の前でおちゃらけた浦和の背番号24だが、2022年の天皇杯では仙台大の同期である岡山MF岩渕弘人、嵯峨が所属していた当時J3いわきFCと2回戦で対戦する可能性があった。
当時の松尾は「あいつらとやれるかもしれない」と胸を高鳴らせていたが、いわきは福島県予選決勝で福島ユナイテッドに敗れてしまったため、対戦のチャンスを逃していた。それだけに待ち望んだ一戦だった。
松尾は「僕たちも結構切羽詰まっていたのでね。相手がどうとか余裕はなかったですけど」と前置きしたうえで、「大学でやっていた選手とJ1のピッチで会えたことはうれしいことです。対浦和戦じゃなければ、ガンガン点もアシストも決めて頑張ってほしいと思いますし、切磋琢磨し合えばいいと思います」と本音を口にした。
取材中、松尾と試合後にユニフォームを交換した岩渕と嵯峨が浦和の背番号24と健闘をたたえ合う一幕があった。岩渕が「またな」というと、松尾はあどけない笑顔で二人の帰路を見送っていた。
青森山田出身!仙台大の嵯峨理久が、“先輩”松尾佑介と“親友”高橋壱晟から受けた「アドバイス」
仙台大で切磋琢磨してきた男たちの絆は色あせていなかった。J1で異なるチームで真剣勝負を繰り広げた彼らは再びピッチで鮮やかな火花を散らすだろう。アマチュアリーグのJFLからはい上がってきた岩渕と嵯峨、クラブワールドカップを控える松尾と対照的な選手たちの再戦を心待ちにしたい。
(取材・文 高橋アオ、撮影 浅野凜太郎)