松尾から受けたアドバイス

コロナ禍の仙台大4年次に嵯峨は自身のプレースタイルを変える努力をしていた。大学3年次は絶対的エースの松尾の主戦場が横浜FCへ移ったことで、チームの決定力不足が課題となった。

これまで豊富な運動量により攻守で切れ目のないサポートをする黒子役に徹していた嵯峨は、チームをけん引する新たなプレースタイルを模索していた。

そこでプロ1年目を迎えた先輩にアドバイスを求めた。嵯峨は松尾から相手の嫌なところを突く技術を教わったことで決定力が向上。東北大学リーグ1部で6試合11得点3アシストと松尾に代わるエースアタッカーとして圧倒的な活躍を披露した。

浦和MF松尾(右)と握手を交わす岡山MF嵯峨

ただ今回のマッチアップでは身をもって先輩が伝えたアドバイスに苦しめられた。

後半38分にペナルティエリア前で松尾が左サイドバックのDF荻原拓也に一度ボールを預けて急加速した。荻原から再びパスを受けるとキックフェイントで相手DFを交わし、切り替えして強烈なシュートを放った。

シュートは枠外に逸れたが、対峙した嵯峨は松尾と荻原の連係プレーに成す術がなかった。

「松くんはドリブルがあると分かっていた上で、縦のコースを自分が切って、はさめるような守備をできれば良かった。それができていれば、松くんにとって嫌な守備だったと思う。相手からしたら嫌なことをやってきたと思うので、そのシーンだけを切り抜いたら松くんの方が1枚上手だった」とほぞを噛んだ。

マッチアップで差を見せつけられ、試合結果も黒星を喫した。トップディヴィジョン出場2試合目でJ1の洗礼を先輩から受けたが、これまで突き落とされればはい上がるようにして成長してきた嵯峨は、この悔しさを糧にして大成しようとしている。

「キワのところにこだわってやらないと、どんなことをすれば相手が嫌なのか。常に考えながらまたやっていきたいです」

リーグ戦での再戦は本拠地で迎える第37節(11月30日)と最終盤だ。岡山の背番号23はホームでリベンジを果たすために成長を誓った。