昨季辛酸を舐めたベテランたちが奮戦

千葉は後半9分に右サイドでフリーキックのチャンスを獲得した。プレースキッカーのMF日高大(まさる)から供給されたボールはゴール前に飛び込んでいた田口の頭上を通り過ぎたが、相手ゴールキーパーがキャッチミス。これをDF鈴木大輔主将が頭で押し込んで勝ち越しに成功した。

鈴木は「泰士がニアで潰れてくれた」とチーム全員で奪った決勝点だったと強調。クラブ在籍5年目となった35歳のキャプテンは、苦楽をともにしてきた田口と交わした試合前のやり取りを明かした。

前節先発復帰したDF鈴木大輔主将

「きょうみたいな大一番で『自分たちの価値を発揮しようぜ』と二人で言っていた。ここで背中で見せられなかったら、自分たちはチームにいる価値がないというか。『こういうときこそ俺らでしょ!』という気持ちを持って入りました」

田口は後半28分にベンチへ下がるも、タッチライン際で仲間を鼓舞。終始立ち上がりながら、手に汗を握った。

千葉は終盤に山形の猛攻を受けるも、イレブン全員で決死のクリアを続け、試合は3-2で終了。昨季の雪辱をチーム一丸となって果たした。

試合終了のホイッスルが鳴り響くと、田口はゴール裏に向かって両手を高く突き上げて感情を爆発させた。「きょうも最高な応援をしてくれたみなさんに勝点3をプレゼントできた。自然と『やったぞ』という感じで出ちゃいましたね」と声を枯らして応援し続けたサポーターへの感謝を口にし、真っ先にキャプテンの元へ向かって、昨季辛酸を舐めたベテランが互いの健闘を称え合った。

声援を送った千葉サポーター

千葉は次節、今月9日午後1時5分より大和ハウスプレミストドームでJ2北海道コンサドーレ札幌と対戦し、開幕4連勝を目指す。

まだまだ衰え知らずのプレーメーカーは「三つ勝っただけ」と、すぐさま気を引き締めた。

「常に危機感は持っています。みんなも間違いないなくその気持ちでシーズンに入ったと思う。ただ、メンバーに入っていない選手も含めたチーム全員で最高の練習ができている。“高め合い”みたいな部分がチームとして良い方向に出ていると思うので、この3連勝にびっくりはしていないです。勝つための準備をみんなでしていきます」

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千葉をよく知る男たちに慢心はない。田口は17季ぶりのJ1復帰に向けて、これからも背中でチームを引っ張る。

(取材・文 浅野凜太郎)

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