宿敵の山形戦で躍動

J1昇格POを懸けた昨季の一戦で、田中は先発メンバーとして名を連ねていた。

勝てば無条件でJ1昇格PO進出という状況だったが、前半2分に失点。背番号7はシュートブロックに身体を投げ出した際に腰を強打した。

「元々その週にぎっくり腰をやっていたんです。それでも何とか出場しようとしましたが、失点のときに再発してしまった。無駄な交代カードにもなってしまいましたし、そこから失点を重ねて負けてしまったので、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした」

昨季の最終節で腰を痛めた田中

腰を痛めた田中は何とかしてプレーを続行するも、パフォーマンスを発揮できず。前半30分で途中交代し、ベンチから0-4の大敗を見届けた。

「最後に負けて、J1への切符を断たれた相手だったので、俺だけじゃなくてみんなも意識していた」と、イレブンは不退転の覚悟でこの日のピッチに立った。

前半13分に失点を許すも、10分後にはMF横山暁之(あきゆき)の同点ゴールでゲームを振り出しに戻した。一進一退の攻防が続く中、田中はサイドで上下動を繰り返しながら、裏抜けのチャンスを狙っていた。

すると前半37分に、FW石川大地が右サイドでボールを受け、スプリントを開始していた背番号7へスルーパスを送った。田中は並走していた相手ディフェンダーを猛スピードで追い越すと、右足でグラウンダーのクロスを供給。ボールは大外で走りこんでいた椿の元へとつながり、最後は右足ダイレクトでゴールへ流し込み、逆転に成功した。

「あれを狙っていました。今シーズン初アシストなのでうれしかったです」とニヤリと笑ってみせた。

今季ちばぎんカップでの田中

千葉はその後に1得点を返されるも、後半9分に鈴木主将がヘディング弾を決めて、再び勝ち越し。2018年以来勝てていなかった因縁の相手を、『今年は違うぞ』と言わんばかりに打ち破った。

「悔しい思いをしたのは選手だけじゃないし、サポーターも絶対に感じていたと思う。きょうはその気持ちをエネルギーに変えられました。(サポーターが)背中を押してくれたので、『ありがとうございます』という気持ちです。この結果に満足せずにこれからもやっていくので、『一緒に頑張っていきましょう』と伝えたいです」と17季ぶりのJ1復帰を目指す。

千葉は次節、今月9日午後1時5分より大和ハウスプレミストドームでJ2北海道コンサドーレ札幌と対戦し、勝てば開幕4連勝となる。

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「(得点やアシストを)取れるだけ取って、チームの勝利に貢献したい」と決意した田中は感謝の気持ちをエネルギーにして走り続ける。

(取材・文 浅野凜太郎)

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