Qoly専属評論家の元Jリーガー高木義成さんがサッカー界の疑問や問題などに独自の視点で切り込む『高木義成の高木式GK視点コラム』。

連載第2弾は現在セリエA・パルマで守護神を務める日本代表GK鈴木彩艶(ざいおん)について高木さんが秘めたポテンシャルなどを解説する。

2024年に開催されたAFCアジアカップでは不安定なパフォーマンスを見せたと批判を浴びた守護神の実力に迫る。

なぜ彩艶が不安定といえるのか

アジア杯で鈴木彩艶のパフォーマンスが不安定だと批判を浴びたことについて

まずこの話はゴールキーパーが分からないと言っている人たちが、なぜパフォーマンスが不安定と分かるんだろうということが俺の意見だよね。散々「ゴールキーパーは分からない。ゴールキーパーを専門的に言ってくれ」といっている人たちや、フィールドプレイヤー出身の解説者の方々やOBたちも全部含めて、「なんで不安定と言えるんだろう」と思っちゃった。

何を持って不安定なわけ?例えば解説者が不安定と言ったら(視聴者は)もう不安定にしか見えないじゃん。だからGKを分からない解説者に対して、「あなたの解説が不安定だ」と俺は思っている。じゃあ(鈴木の)不安定なところを全部言ってみろよって。それを言っている人は一人もいなかった。

アジアカップ敗退に落胆する鈴木

まず俺は(鈴木が)不安定ではないと思う。別視点でいうと、日本のゴールキーパー界での彩艶の期待値が上がり過ぎちゃったのよ。何かにしろ「浦和レッズにはすごいキーパーがいるらしいよ」、「身体能力も高そうだ」と、そういう意味で期待値が上がり過ぎた。例えば(J1のFC町田ゼルビアGK)谷晃生だったらあれは仕方ない失点と言われたとしても(実際に俺から観ても仕方ない失点だと思う場面があったとして)、鈴木彩艶だとあの失点はミスだと言われてしまう可能性があるわけ。

(鈴木の)期待値が上がった分だけそうなっているというのが一つじゃないかな。あとはさっき言った通り、ミスとか、安定感が分からない人間が大多数で、そのプレーに至った経緯を考えている人間がどれだけいたのか。この2軸だと思うよ。

怖いもの知らずでやっていた時代

国内でプレーしていた鈴木の評価

最初に彼を観たのはU-20日本代表だったかな。(千葉・)秋津でやっていた合宿を観に行っていたんだよ。そのとき観て思ったことは「うわ、歴代のGKコーチたちはこの子たちにマジで仕事していなかったんだな」と思ったね。なんで「この子たちに基本を教えていないんだろう」、「育成年代で基本を教わっていなかったんだろうな」と。だからボールをポロポロこぼすし、ステップワークも洗練されていなかった。

浦和でゴールマウスを守った鈴木

それからJリーグに出ていたときに、「怖いもの知らずでやっているな」というのが彩艶のイメージ。周りも(鈴木を)分かっているから、例えば無謀なハイボール処理をしたとしても、周りのディフェンスが素早くカバーしていた。だから失点に直結することが少なかったんじゃないかな。ポジショニングが悪いから、一見スーパーセーブをするように観えていた。