ベテランの闘志はまだまだ燃え盛る
昨季はリーグ戦34試合に出場してJ3歴代最多出場記録を更新するなど順風満帆なシーズンを過ごしていたが、今季は負傷の影響でリーグ戦7試合と出場数が激減。八戸でキャリアに幕を降ろすことも考えていたが、出場数の減少により山田の反骨心に火が着いたという。
「秋田を満了になって、トライアウトで名刺を配って、きっかけがあって、八戸が取ってくれました。このチームが僕にとって最後になるかなと思って八戸に入りました。2シーズンしっかりと試合は出られましたが、最後の3シーズン目でケガがあって長期離脱をしてしまって、なかなか試合に絡めず…。その中で試合に出たい気持ちもあったし、まだまだサッカーをしたいという気持ちが勝っちゃって、このトライアウトに出させてもらいました」と、出場機会の減少により競技への意欲が再び燃え上がったという。
負傷により約2カ月間戦線から離脱したが、懸命なリハビリによって戦場へ舞い戻った。八戸の若手は2部練習が課されており、ベテランの山田は1部練習の参加で許されていたが、モチベーションの高さを見せるために自ら2部練習に率先して参加した。
「30歳以上は免除されていますけど、僕はけがから復帰してから2部練に最年長でもしっかりと頑張らせてもらって、気持ちを見せていましたけど、試合には絡めなかった悔しい思いをしました。まだまだやりたいなというところで、今回参加させてもらったのですが、僕を必要としてくれるチームがあれば続けたいと思います」と進路の希望を明かした。
また八戸にはチームを象徴する選手がいた。東北2部北時代から在籍17年と八戸一筋でプレーし続けたMF新井山祥智(しょうち)の存在も山田の現役続行に影響をもたらした。今季で引退したレジェンドは技術面に優れたファンタジスタであり、長くプロ選手として活躍し続けた姿勢から刺激を受けたという。
そして自身を支え続けてきたファンの存在も大きい。取材時にブラウブリッツ秋田、八戸とこれまで所属してきたチームのサポーターにメッセージを求めると、柔らかい表情で受け応えた。
「秋田も八戸もそうでしたけど、本当に熱い人たちばかりで、どの試合でも秋田も八戸も勝てない時期はありましたけど、どんなときでも、選手の背中を押して一緒に戦ってくれました。自分たちの気持ちを押し殺してでも一緒に戦ってくれる熱いサポーターがたくさんいます。本当に感謝していますし、どんなときでも、選手の味方になって戦ってくれるので本当に心強かったです。
感謝しかないです。チームを出ていても応援してくれるので、その人たちあっての僕たちだと思います。僕が八戸にいるときから言っていますけど、『みなさんの存在が僕たちの戦う力』と言っています。みなさんなくしてはここまで頑張ってこられなかったので、本当に感謝しかないです。僕はまだまだ続けたいと思っているので、ぜひ応援していただけたらありがたいです」とファンに深く感謝していた。
【インタビュー】大ケガからの契約満了、名刺を配ったトライアウト、J3八戸MF山田尚幸が逆境を乗り越えて成し遂げた偉業とは
1度目は大ケガにより選手としてチーム関係者にプレーを披露できなかったが、2度目にして自身のプレーを力強く披露した。きょうで37歳の誕生日を迎えるベテランの現役続行の意志は強い。新天地でピッチを駆け抜ける姿を多くのファンに見せてほしい。
(取材・文・撮影 高橋アオ)