今季契約満了となったJリーガーたちが集う『JPFA(日本プロサッカー選手会)トライアウト』が11日、12日に実施された。11日の部に参加したJ2藤枝MYFCを今季で契約満了となったGK菅原大道(ひろみち)は190センチの高身長を生かしたブロッキングなどでスカウトに向けてアピールした。

闘病中の恩師に新天地での活躍を

今回が初めてのトライアウト受験となった菅原。藤枝での在籍3年間は公式戦出場ゼロと出場機会を得られなかったが、紅白戦ではよく通る声でチームメイトを鼓舞し、コーチングでディフェンスラインを整えた。

「去年、一昨年とトライアウトを受けている方がMYFCにもいらっしゃったので、そういった選手たちに『すごくやりづらい』と聞いていました。でも自分の特徴の声がけといった最低限のプレーは見せることができたという印象です」と振り返った。

藤枝入団前は北海道1部北海道十勝スカイアース、当時関東1部だった栃木シティFCでプレー。地域リーグを主戦場にしていた菅原だったが、夢だったJリーガーとなった経緯は、恩師シュナイダー潤之介さん(AC長野パルセイロGKコーチ)の存在が大きかった。

「当時、栃木シティのGKコーチのシュナイダーさんからすごく前向きな言葉をずっとかけていただいていて、『お前は絶対Jでやれる』という言葉をかけていただきました。常にいい準備をすることだけを決めて練習に取り組んでいました。いろいろと重なって運よく(藤枝に)入ることができました」と恩人とのやり取りを振り返った。

横浜FCでプレーした現役時代のシュナイダーさん(右、GettyImages)

恩師のシュナイダーさんは、先月19日に所属先の長野から前立腺がん(ステージ4)の診断を受けたと発表された。闘病中の恩師に新天地で活躍する姿を見せたい菅原は、このトライアウトに決意を持って臨んだ。

「本当に恩人と言っても過言ではないです。シュナさんのおかげでJリーガーになれたので、『ここで終わるわけにはいかない』という思いがあります。シュナさんの報告を受けて改めて強く思ったので、シュナさんも本当に大変だと思いますけど、負けずにピッチへ戻ってきてまた輝いてほしいです」と自身を熱心に指導した師匠の快方を願っていた。

進路は自身を必要とするクラブを志望する菅原は、新天地でのプレーを望んでいる。サッカーの町である藤枝で多くのファンから温かい声をかけられたことに感謝していた。

「3年間試合に出ることはありませんでしたが、熱い応援ありがとうございました。チームは変わってしまいますが、サッカーはまだ続けていくつもりです。もしまた藤枝に戻ってくるような機会があったら、応援お願いします」

ボールを持ち運ぶ菅原(右)

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これまで応援し続けてきたファン、Jリーガーへの道に導いた闘病中の恩師に新天地でプレーする姿を何としてでも見せたい。『ここで終わるわけにはいかない』と決意を胸に戦った菅原に吉報が届いてほしい。

(取材・文・撮影 高橋アオ)

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