60チームの頂点へ。その頂点に立つ挑戦権を得たのは名古屋グランパスとアルビレックス新潟です。
前者は王座奪還、そして苦楽を共にしたランゲラックの退団に花道を飾るために。後者は初のタイトル獲得、アルビレックス新潟のスタイルの証明のために。
それぞれの物語の完結のため、全力を尽くし、王者の座を奪いにかかります。この決勝戦が最高の死闘にならないはずがありません。
今回はルヴァンカップ決勝戦がどのような試合展開になりそうなのか、試合の注目ポイントについて考えてみようと思います。
最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
戦績データ
■過去の対戦成績
名古屋17勝、新潟13勝、8引き分け
■直近5試合の直接対戦成績
(※左がホームチーム)
2024/9/18 名古屋 3-0 新潟
2024/3/9 新潟 1-0 名古屋
2023/8/5 名古屋 1−0 新潟
2023/4/1 新潟 1-3 名古屋
2016/9/10 新潟 0-1 名古屋
名古屋4勝、新潟1勝
直近5試合の戦績
名古屋グランパス
vsG大阪(A) 2-3 ⚫︎
vs札幌(H) 2-0 ⚫︎
vs横浜FM(H) 1-2 ⚫︎
vs横浜FM(A) 3-1 ○
vs福岡(A) 0-1 ⚫︎
アルビレックス新潟
vs東京V(H) 0-2 ⚫︎
vs 横浜FM(A) 0-0 △
vs 川崎F(A) 0-2 ○
vs 川崎F(H) 4-1 ○
vs 鹿島(H) 0-4 ⚫︎
予想スターティングメンバー
名古屋グランパスからすると、野上結貴の怪我の具合がどの程度のものなのか、ここが難しいところです。しかし35節のガンバ大阪戦の吉田温紀のパフォーマンスは安定していたので、彼が先発すると予想します。
対するアルビレックス新潟です。稲村隼翔が出場できるかどうかは、試合を大きく変えていきそうな気もします。試合に出た時の彼のパフォーマンスはもはやJトップクラスにあると思いますし、アルビレックス新潟のスタイルに完全フィットしています。だからこの大一番に彼がいることを望んでの予想です。
ボールと共に進む新潟、ボールを狩る名古屋
この試合は大きくスタイルが異なるチーム同士の一戦です。ボールを握りながら、ボールと共に進んでいくアルビレックス新潟。ボールを狩って速攻を仕掛けていく堅守速攻の名古屋グランパス。試合の大枠としてはアルビレックスがボールを握りながら、グランパスがそれを狩るという展開が多くなりそうです。
ここでグランパスからすると作り出したいのが「迎撃+ショートカウンター」です。マンツーマンディフェンスとショートカウンターは彼らの最大の武器となっています。
ではまずはこの試合でどのようにそれを押し出していくのか、どこで迎撃を作り出していきそうかを菅がてみようと思います。
閉じ込めるための迎撃とショートカウンター
それではまず以下の図をご覧ください。
この試合のグランパスのマンツーマンの担当はこのようになると思います。
CBには山岸祐也と永井謙佑が担当すると思います。前者はアビスパ福岡で鍛えられたプレスの上手さ、後者は圧倒的なスピードを武器にそれぞれのCBに違った形で制限をかけていくでしょう。これは他の試合でも行っています。
さらにアンカー化するCHや横並びになるCHにはSTの森島司と多くは稲垣祥が前に出てきて捕まえることがほとんどです。そして基本的にはSBにWB、3トップには3CB、OMFには椎橋慧也がマークの担当を行っていきます。
この狙いとしてボールホルダーにパスコース喪失と受け手の時間とスペースを奪っていくことで満足にプレーさせないことを考えています。
ではグランパスはどこで迎撃を作ることを考えているのかに触れていきます。これには大きく2つのパターンがあります。以下の図をご覧ください。
まず1つ目は外側に誘導した場合です。CBに誘導しここから入ってくるパスで迎撃を作り出していきます。その迎撃場所として、CHとSBに多くは設定されています。その奥のSHやCFへの上のパスはCBが狙って守備に入ることができるので、弾き返すことができます。
特に今季急成長した三國ケネディエブスは潰しにいくタイミングが良くなり、動けて潰し切れる選手になりました。上のパスで彼の壁を越えるのは容易ではありませんし、グランパスのキーマンの1人になっています。
この手前の迎撃と上のパスの弾き返しが可能になっているのは、やはりCBへの牽制と制限があるからです。なるべく『CBに良い選択をさせない』ようにプレッシングをかけていくことで、この守備は成り立っていると思います。
1stプレス隊は名古屋グランパスの命綱と言ってもいいかもしれません。だからキャスパー・ユンカーではなく、より守備に走れる永井謙佑や、プレスが上手な山岸祐也がスタートから使われることが多いのかもしれません。
では2つ目の迎撃の作り方を考えていきましょう。以下の図をご覧ください。
もう1つの方法が中央での迎撃です。これは山岸祐也サイドのCBに出た時に多く起こり得る現象です。彼が上手にスペースを消しながらプレスをかけていく事によってGK にボールを戻させます。これが全体のプレスのスイッチとして働き、永井謙佑がそのスピードを生かしてGKに制限をかけていきます。
外からプレスをかけ、選択を急かせる事によって、中央で迎撃を作り出します。この方法もよく見受けるパターンで、グランパスの武器となっています。
さらに出口となるCFにもCBは必ず着いていきます。どれだけラインを落としても着いていく事が多いので、これは確実に決まりとしてあります。スペースを開け渡すとしても、それを行うことのできる決断力は凄いと試合を見ていて感じます。
グランパスはこの2つの方法を使いながら、アルビレックスの前進に制限をかけていくと思います。
ではこれに対してアルビレックスが回避できそうな方法を考えてみようと思います。
力を分散させたいアルビレックス
グランパスの迎撃を回避、空転させるために、やはりスペースと動き、そしてその影響力を利用する事が必要になってきます。そしてアルビレックスはそれが出来るチームです。
ではその方法を考えてみようと思います。以下の図をご覧ください。
まず考えたいのがCBのプレス耐性です。特に冒頭にも触れた稲村隼翔にはそれが高いレベルで備わっています。アルビレックスからするとここを起点に、試合を作っていきたいところです。だからここの稲村隼翔とCFの駆け引きは1つ楽しみなところでもあります。
これを作り出すと、例に倣ってグランパスのCHが前に出てくるでしょう。これを助長するためにアルビレックスCHも多少ダミーの出口を作ると思います。さらにSBもしっかりとWBを引っ張り出すための角度を付けたサポートも行っていくと思います。
これらを行っていく事により、MF-DFのライン間を広げる事が可能になってきます。まずここに空間を作る事が重要になってきそうです。逆にグランパスはここを広げられた時に、潰し切れるか否かでチャンスになるかピンチになるかの、紙一重の守備を行っていると言えます。
ではここからどのように回避し、攻撃に出けそうかを考えてみます。以下の図をご覧ください。
まずやはり大切になるのがCBからの縦パスです。ここに出口となるCFやOMFが降りてきます。当然ですが、背後を伺っていないと、潰しにくるCBに「迷い」を生じさせて「出足の遅れ」を発生させることは難しくなります。
ここをセットで考えることが出来た時に、初めて手前の出口が生きてきます。これをハイレベルで行うこと、ほとんど判断を間違うことがないのが稲村隼翔です。受け手の状況とCBのポジションを見て、背後に飛ばすのか、縦パスを打つのか、ここを間違えることが皆無です。本当にとんでもないCBだと思います。
そして縦パスを引き取るのが長倉幹樹や長谷川元希になるでしょう。特に長倉幹樹は予備動作を加えながら、CBの力を利用してターンする技術が存外に上手いです。ここの単独のターンと、CHの列上げによるサポートで、迎撃をいなす、プレスの力を折っていくことは可能になりそうです。
ここのCHのリポジショニングや列上げはとても大切になるでしょう。そしてアルビレックスはこのサポートのリポジショニングも上手なチームです。グランパスのプレスに恐れずしっかりとボールを受けて、受け直すを行っていきたいところです。
グランパスの最大の武器である迎撃+ショートカウンターを押し出すことができるのか、それともアルビレックスが守備の力を降りながら、プレスを空転させる事ができるのか。
ここがまずこの試合を分けていく1つ目のポイントになりそうです。