[J2第33節清水エスパルス1-1横浜FC、28日、東京・国立競技場]

J2リーグ歴代最多の5万5598人が訪れた首位を決める天王山は、1位の清水と2位の横浜が互いに勝点1を分け合う形となった。

オレンジ色に染め上げられたサッカーの聖地。試合前にはドローンによる演出が行われるなど、その盛り上がりはJ2の枠に収まっていなかった。

J1復帰を目指す両チームにとって、これまでにない素晴らしい環境下での試合だったが、清水GK権田修一は「だからこそ勝ちたかった」と唇を噛んだ。

「これだけのお客さんが来てくれていた中で、結果を残せなかった。エスパルスは多くの人を集められる素晴らしいチームです。だからこそ、クラブとしてはもう1段上を見据えて、普段からきょうと同じような雰囲気の中でプレーして勝てるようにしたいですね」

清水にとって、国立は決して相性のいいスタジアムとはいえない。2022年から今年にかけて、J1横浜F・マリノス、J2ジェフユナイテッド千葉、J1東京ヴェルディとJ1昇格プレーオフ(PO)決勝で試合をしているが、いずれも勝利できなかった。

「これから先、自分たちがタイトルを狙うのであれば、国立はファイナルの舞台になるかもしれない…」

静岡から駆け付けたサポーターのためにも、勝利を届けたかったという気持ちが残っている。ただ、失点こそ許したものの、首位の清水にとっては結果だけを見れば合格点の試合だったはずだが、守護神の表情は暗かった。

前半は1位と2位の対決らしく手堅い内容だった。清水は守備時5バックで守る相手を崩ぜず、一方の横浜は事前の想定よりも前からプレッシングに来なかったホームチームに対して、カウンターを発揮できなかった。

高い攻撃力を武器に、ここまでJ2を戦ってきた清水らしくない前半ではあった。背番号57は「普段やっていたプレーを出せていなかった点が、個人的にはすごく気になる」と戦いを振り返った。

後半になると試合は徐々にオープンな展開に変わっていった。11分、左サイドからのクロスボールに合わせた横浜FW髙橋利樹のヘディングシュートは、権田の頭上を越えてクロスバーに直撃。間一髪で守りきったと思われたが、ボールは奇しくもFWジョアン・パウロの前に跳ね返り、そのままヘディングで先制点を奪われた。キーパーにとってはノーチャンスに見えたが、守護神は「個人的にパフォーマンスは非常に悪かった」と反省した。

得点が必要になった清水は、後半23分に3枚替えを実行。人を追い越すプレーが増え、攻撃が活性化されると、29分に交代選手のMF宮本航汰が右サイドから出されたパスのこぼれ球に反応。最後は滑りながら右足でゴール左側に押し込んだ。

J2頂上決戦はそのまま1-1で終了。清水はシュート10本で、5本の横浜を上回ったが、内容でいえばこの試合はアウェーチームのものだった。試合後、清水の秋葉忠宏監督は「劣勢の状況から、最低限の勝点1はもぎ取った」と選手たちを称えるとともに、「我々は首位にいる」と力強く語った。