多重国籍強化の成果と課題

インドネシアはプレミアリーグ52試合、ラ・リーガ123試合出場のジョルディ・アマトが加わるなど、これまで新興国に加わってきた多重国籍選手の質が劇的に向上している。その成果もあってか、東南アジアの総合スポーツ大会である第32回SEAゲームズで32年ぶりに金メダルを獲得し、今年開催されたアジアカップではGL突破につなげた。

そしてアジアカップ後もDFネイサン・ジョー・アオン(オランダ1部ヘーレンフェーン)、DFジェイ・イツェス(イタリア2部ヴェネツィア)、MFトム・ヘイ(オランダ1部ヘーレンフェーン)、FWラグナル・オラトマンゴン(オランダ1部フォルトゥナ・シッタート)を新たに加えて、ワールドカップアジア2次予選に臨み、東南アジアの強豪であるベトナムとの2連戦を1-0、3-0と連破してみせた。

この補強で23歳のジェイ・イツェスは群を抜く活躍を披露。センターバックで出場したイツェスは守れば的確なポジショニングと優れたフィジカルでベトナムの攻撃をシャットアウトし、3月26日に開催したベトナム戦では先制点も奪ってみせた。今年で32歳を迎えたアマトのように全盛期を過ぎた選手もいれば、イツェスのようにセリエB昇格を繰り広げるヴェネツィアでレギュラーセンターバックを務める伸び盛りな選手を加えたことは大きかった。

ベトナム戦で優れた実力を見せたイェツス(右)

2018~2019年にインドネシア代表で監督を務めたサイモン・マクネミー氏がドイツの国際放送局『DW』のインタビューを受けた際に、「外国人選手は基準を上げるのに貢献できる。インドネシアの国内リーグはまだアジアの強豪と渡り合えるほど強くはないが、より大きな、より優れたリーグの選手を起用すればチャンスはある」と多重国籍選手補強のメリットを語った。

一方でインドネシア協会のアディカ・ウィカクサナCCOは「外国生まれの選手に過度に注目すると、長期的な投資として地元の人材を育成するためのインフラ改善とトレーニングの重要な必要性が無視される危険がある」と『DW』のインタビューで懸念を吐露した。

また1月にQolyのインタビューを受けたフィリピン代表DF佐藤大介もインドネシアやフィリピンと欧米のルーツを補強する東南アジア代表の状況を「最終的な解決方法はその国のアカデミーから底上げをしなきゃいけないと思っています。そこがフィリピンにとって1番のチャレンジです。2030年ワールドカップを目指すことを考えたときにこういう解決方法はアリだと思いますけど、長い目で見たときに国内サッカーの発展がしっかりしないといけないと思います」と指摘していた。

ただMFマルセリーノ・フェルディナン(ベルギー2部デインズ)、スロバキア1部セニツァでプレーしたエギ・マウラナ・フィクリ(インドネシア1部デワユナイテッド)と、インドネシア出身選手が欧州リーグに挑戦するケースも出ているため国内育成も一定の結果を出している。結果を出しつつある国内育成をより手厚く強化して、欧米にルーツを持つ選手に依存しない体制作りが課題となっている。