試合を重ねて進化した富士大の形

なぜ彼らは強豪大を立て続けに打ち破れたのか―。その理由は迷いのなさにある。富士大の守備はシンプルであり、エース級の選手を徹底的にマークし、危ないエリアに侵入されれば前を向かさずクリアに徹する。

ハイボールはGK折口がキャッチングで処理し、ゴール前はしっかり中央を固めてブロックを形成する。

攻撃はロングボールからの攻め上がり、球際の攻防を制してのカウンターと字面だけ見れば何の変哲もない堅守速攻に見えるが、最大の強さは富士大イレブンの「迷いのなさ」だ。

メンバー全員がやるべき目的を理解しているため、攻守の切り替えの初動、次のプレーの移行などプレースピードが極めて早い。

GK折口は「やるべきことがはっきりしているからできること」と話すように、プレースピードが極めて早いサッカーが強豪大に通用した。

このサッカーが完成するまでに敗戦を繰り返しながらたどり着いた。この日先制弾を決めたDF白和は戦術の完成までの経緯を話す。

先制点を決めて歓喜する白和(中央)

「(大会前の事前)合宿をやる中で、関東や関西の相手ともやりましたけど、自分たちに足りない部分がはっきり見えました。まずは守備から見直そうということで、チーム戦術をもう1回全体で確認して、そこをチーム全員一人、一人がサボらないで徹底的にやったことで結果につながったと思います」と戦術を見返して課題を徹底的に分析したという。

そして高鷹雅也監督は大会を通じて戦術の完成度が高まった考察を明かす。

「相手の(強さが)少しずつ上にレベルが上がっていった。例えば法政さんもそうだし、きょうの関学さんも、(対戦相手が)最初から伝統校同士だったじゃないですか。そういったところで、僕らは(対戦相手のレベルが)一つ、一つ上がったところは幸いなのかな」

初戦は中国第2代表の周南公立大、2回戦は九州王者の日本経済大、3回戦は昨冬インカレ(全日本大学選手権)8強に入った東海覇者の中京大、準決勝は同大会5度の優勝を誇る関東の名門法政大、そして決勝は大会屈指のチーム完成度を見せた関西王者の関西学院大。

初戦から徐々に相手の実力は上がり、戦うごとに富士大は戦術の練度が高まっていく。この大会での勝利はサプライズではなく、強敵を倒しながら成長を遂げて栄冠に輝いた。