攻守一体のスタイルで旋風を巻き起こす
上記の通り、ウィングバックを置かない中盤ダイヤモンド型の3-4-3(3-3-1-3)が採用されているロアッソ熊本。一般的ではない珍しいシステムで独自のスタイルを構築しているのが、様々なカテゴリーで豊富な指導歴を誇る大木武監督だ。
大木監督といえば、ポゼッションを重視した攻撃的スタイルを標榜していることで知られる。FC岐阜時代には最終ラインから徹底してパスをつなぎまくる異色のサッカーで注目を集めていたが、自身3年ぶりに挑んだJ2の舞台では攻守に一体感のあるスタイルで旋風を巻き起こしている。
攻撃時は3-3-1-3の形でボールを保持し、3バック&アンカーのビルドアップを中心としたリズミカルかつ流動的なパスワークで相手を翻弄。中盤ダイヤモンド型の3-4-3はトライアングルが作りやすいためボールを回しやすく、選手間の距離が近いぶんボール保持者へのサポートも手厚くなる。
また、距離が近いことによりボールロスト後のプレスもかけやすく、奪われた後のアグレッシブなハードプレスも特長となっている。
なお、即時奪回およびハイプレスが難しい場合は5-3-1-1へ可変し(下図参照)、両インサイドハーフが最終ラインへと吸収されて5バックを形成。両ウィングが中盤まで下がってブロックを作り、コンパクトに守る。
また、ピッチ上から見て取れるのは、“前への意識”だ。3バック&アンカーは流動的なパスワークの基盤となるビルドアップだけではなく、相手DF裏のスペースを狙ったフィードや球足が速い縦パスも織り交ぜていく。
加えて3バックの両ストッパーはオーバーラップで攻撃に厚みをもたらす役目も果たしており、第38節のジェフユナイテッド千葉戦では右CBの黒木晃平が勢いある攻め上がりでスペースを突き、左足ミドル弾を沈めてウノゼロ勝利の立役者となった。
7月度および9月度の月間優秀監督賞に輝いた大木監督の手腕に疑いの余地はなく、サインプレーを用いて創意工夫に富んだセットプレーをデザインする髙橋泰コーチらコーチ陣の働きぶりも素晴らしい。
攻守に明確なコンセプトを打ち出して拠り所が生まれたことが、躍進の要因として挙げられるだろう。