━━続いてですが、一人のサッカー選手として評価した時、岩政選手が考える能登選手の魅力や注目点を教えて欲しいという質問が来ました。

能登
ないでしょ(笑)フワっとしている選手なので(笑)

岩政
んー、パスにしろ、キープにしろ、シュートにしろ、攻撃の面で“個”はあると思います。ただ、それよりも長所に感じるのは、良い意味で「試合の流れに乗らない」というところですね。

例えば、0-0で試合が膠着状態になると、多くの日本人選手がそのスコアの流れに沿っていっちゃうんです。その流れに関係なく「打開しよう!」とはみ出す感覚を持った選手は少ない。でも、彼はそこを持っているので、日本の中では面白いと思いますね。

能登
ありがとうござます!これからも頑張ります(笑)

━━逆に能登選手に。東京ユナイテッドでは岩政選手はコーチとの兼業でしたが、「指導者・岩政」として印象的なエピソードはありますか?

能登
全てが貴重でしたけど、大樹さんの一言って、皆がめちゃくちゃ反応するんですよね。「大樹さんがこう言っているよ」みたいな感じで。

僕は自然に「こういう話があったけど、自分はこの状況ならこうするな」って考えるタイプですが、大樹さんはすごいバランスを取りながら話しているなと思いながら聞いていました。

なんというか、大樹さんは先生なんですよ。間違っていることはちゃんと正してくれるし、人として「この人に付いていきたいな」と思える人ですね。

岩政
指導者として知識は当然アップデートしていきますが、あまり選手たちに口うるさく言わないようにしたいなとは考えていました。プレーする楽しさを忘れさせたり、やらされいる感を与えてしまったりすることは避けるようにと言うか…。

━━ロベルト・バッジョの時代を持ち出すと、アリーゴ・サッキ監督(1980年代後半から1990年代前半にかけて、ミランで黄金期を築き上げた名将だが、その徹底した指導で選手との確執も多かった)のような指導者にはなりたくないという感じでしょうか?

岩政
というより、そこは伝え方次第かなと。

サッキにしても、むしろ、あそこまで練度の高いサッカーを行えていたわけで、つまりは選手も前向きに挑戦できていたはずなんですよね。もちろん、外から見るだけでその全容はわかりませんが。

ただ言えるのは、日本で指導者があそこまでがんじがらめにしてしまうと、日本人はそこから個性を出すというのは難しいなと思います。サッキ時代のミランが強かったのは、あの中でも個性を出せる選手が揃っていたからですが、日本人にはそういう選手が少ないですからね。