温故知新なアプローチ

今から遡ること20年ほど前のドイツ代表と言えば、シンプルなサッカースタイルが定番であった。

自慢のフィジカル能力を活かし、縦に早い攻め、サイドからのクロス攻撃が彼らの十八番であったことを若いサッカーファンには想像できないだろう。それほどまでに彼らのスタイルは大きく変化したからだ。

しかし、その伝統も言うべき攻撃手法がこの2試合では復活の兆しを見せた。

無論、ベースとなる攻撃は変わりない。しっかりとボールを保持し、ボールホルダーに対して周辺の選手が効果的なポジショニングとランニングを敢行。パス交換と動き出しの質でアタッキングサードを攻略する方法だ。

だが、フランス戦、ペルー戦において度々見られたのが、プレッシングからの素早い攻撃であった。

これまでもハイプレスからのショートカウンター、特に相手のカウンターアタックを未然に防ぎ、自分たちのカウンターに持ち込む「リカウンター」は彼らの武器であった。数年前にEUROやワールドカップを制した時、最大の長所の一つとなっていたのもこれであった。

その後、ロシアワールドカップへの予選、本大会と相手チームとの相性的な問題もあり、徐々にその存在は薄まっていったのだが、ここにきてリバイバルの気配を見せている。

特にペルー戦においては、彼らが「ゴールキック時にGKからのビルドアップを率先して行う」というチームスタイルを志向していたこともあり、何度も連動したハイプレスから決定機を創出。スコア上では2-1と僅差であったが、そこから生み出したチャンスの数を見れば大勝してもおかしくないほどであった。

そして、同様に再注目されそうなのが「サイドからのシンプルなクロスボール攻撃」だ。

今回、サイドバックの選手にセンターバックの選手を起用したことも影響しているだろうが、サイドにボールが展開された後、周囲とのパス交換を省略し、早い段階でDFラインとGKの間に鋭いボールを入れるシーンが目立った。

最前線に起用されたティモ・ヴェルナー、マルコ・ロイスとこの攻撃は少々ミスマッチであったこともあり、なかなかタイミングが合わなかったが、トーマス・ミュラー、ニルス・ペーターゼンのようにターゲットプレーを得意としている選手も擁しているため、ドイツの攻撃のオプションとなるケースは十分に考えられる。