ジャンフランコ・ゾラ(49)。1996年から2003年までチェルシーに在籍した元イタリア代表のFW。

“マジック・ボックス”という愛称が示す通り、変幻自在のフリーキックなどマジカルなプレーで人々を魅了し、人格的にも大変素晴らしい人物であることからチェルシー史上最も愛されたレジェンドのひとりだ。彼が背負った背番号25は、今も事実上の永久欠番になっている。

そのゾラが35歳当時、2002年1月3日に、英国サリー州ギルフォードにあるホスピスを慰問した。そこで、ひとりの少年と忘れがたい出会いを果たす。

マシュー・アシュトン君。チェルシーを愛する8歳の小学生だ。一番のアイドルはもちろんゾラで、頭の中はいつも背番号25への憧れでいっぱい。病室でも欠かさずに情報を追っていた。

そんなマシュー君の入院の理由は脳腫瘍。末期だった。

慰問実現のきっかけは、もはや救いようがないと判断した医師が両親に叶えてあげたい夢を尋ねたこと。「ゾラに会えたら他の何よりも喜ぶ」との願いをダメ元でチェルシーに伝えたところ、本人が快く了解してくれた。

当日、病室をサプライズ訪問するゾラ。まさかの事態に驚いたマシュー君は、気が動転してしまいどうすれば良いのか分からない様子。

それでも、ゾラのユニフォームとチェルシー全員のサインが入った写真がプレゼントされると、満面の笑みを見せ、およそ20分間にわたって憧れのヒーローとフットボール談義を楽しんだ。

そしてこの時、ゾラはひとつの約束をする。

「素敵な笑顔のお礼に、何か特別なプレゼントをするよ」

最高の時間だった。大変な闘病生活を送ってきたマシュー君だが、この日の出来事が彼にとっての大きな大きな希望となった。

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