当時モナコはロシアの大富豪ドミトリー・リボロフレフ氏がオーナーに就任し、大きな補強を行っていた時期である。

FCポルトからはハメス・ロドリゲスとジョアン・モウティーニョがやってきて、アトレティコ・マドリーからはラダメル・ファルカオが加わった。

そんな派手な動きを行う中で、このマルシャルの取り引きについては決して注目されてはいなかった。

リヨン側は当時経営状況に苦しんでおり、移籍を拒否したバフェタンビ・ゴミスを一時干していたくらいで、当時の監督レミ・ガルデ氏もマルシャルは資金難で売却せざるを得なかったと告白している。そういう状況の中での取り引きだった。

しかし、この取り引きはマルシャルにとって結果的に大きかった。もしかしたら、リヨンに残っていたらナビル・フェキールとアレクサンドル・ラカゼットのブレイクに押され、まだサブに留まっていた可能性はあるし、チャンピオンズリーグでも活躍は出来なかったかもしれない。

だが、モナコはこの後リボロフレフ会長の投資が絞られてしまったこともあり、ハメス・ロドリゲス、ラダメル・ファルカオらは売却され、2014-15シーズンの前線は大きく入れ替わった。

万能型ヴァレール・ジェルマンは今一つ信頼を得られず、コートジボワールの巨漢FWラシナ・トラオレは怪我に苦しみ、ディミータル・ベルバトフは年齢的な問題もあって常に使える存在ではなくなっていた。

そして、そこでチャンスを生かしたのがアントニ・マルシャルである。彼は昨季の前半戦の段階でもスタメンという立場ではなく、わずか1ゴールしかあげていない。

しかし後半戦で怪我を抱えたベルバトフのポジションを奪うと、28節から怒濤のゴールラッシュを見せ、一気にモナコのエースに成長。昨季のニュースターとしてフランス代表入りも待望される存在になった。

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