リバプール、アーセナル、チェルシー…。放映権料で得た利益で莫大な投資を繰り返し、欧州レベルでの結果を求められていたプレミアリーグの強豪クラブが次々と欧州の舞台から去って行く中、CLにおいて最後の砦となったのが昨年の英国王者、マンチェスター・シティだった。CL枠の数に関わるリーグランキングの事を考えても、英国全体にとって大きな意味を持つ試合だった。
しかし、相手は欧州屈指の強豪バルセロナ。誰もが知る世界最高のクラブは、1stレグにおいて2トップを採用したマンチェスター・シティを苦しめた。
ルイス・スアレス、ネイマール、リオネル・メッシという、世界最高峰の3トップを揃えた攻撃陣に、アンドレス・イニエスタやイヴァン・ラキティッチが絡む破壊力は、「シャビという指揮者の下で均整の取れた曲を演奏するオーケストラの様な従来のバルセロナのフットボール」というよりも、「それぞれの個性的な演奏者が、力強く即興で演奏を作り上げるジャズ」のような印象を受ける。ただ、レベルとして世界最高クラスであることに変わりはない。
そんなルイス・エンリケの下で変化しつつあるバルセロナに対し、ペジェグリーニ率いるマンチェスター・シティが一矢報いることが出来るか。というのが、一般的な見方だったのではないだろうか。
今回は、バルセロナの前線が連動しながら繰り出した「死角を狙うフリーラン」の技術について考察しつつ、マンチェスター・シティの構造的問題点にも触れていきたい。
まずは、マンチェスター・シティが見せた左サイドでの狙いの形を見て行こう。
外の高い位置を一度取ったミルナーが右サイドバックを引き付け、内側へ。SBを内側に動かすことで、コラロフが上がってくるスペースを生み出す。
ウイングとサイドバックが高い位置で攻撃に参加するバルセロナのシステムに対する、1つの返答だ。特に攻撃の要として頻繁にオーバーラップするダニエウ・アウベスの背後は、攻撃において使いたいスペースだ。
こちらは攻撃を仕掛けた場面の1つ。
上がりきった右サイドバックの背後を突くミルナーの走り込みによって、サイドのスペースがCBのピケによってカバーされる形に。
こうなれば、スピードに定評のあるアグエロが裏へ抜け出し、チャンスを作り出せる可能性が上がる。
同様にミルナーが、相手の右サイドバックの上がりに呼応してカウンターで高い位置へ。アグエロとシルバが中央で相手を引き付ける仕事をこなしており、かなり自由な状態でボールを保有出来ている。