・アギーレは"条件"を満たしていたのか?

少し話が長くなってしまったが、代表監督にはコンテやファン・ハールのような戦術的柔軟さが必要不可欠だ。今いる選手の強みがもっとも生きるシステム、戦術を選択できるのが条件である。2月3日に解任が発表されたハビエル・アギーレ(元日本代表監督)は、果たしてこの条件を満たしていたのだろうか。

アギーレは就任当初から、中盤が逆三角形の4-3-3を採用した。もちろん、この選択自体は間違っていなかったと思う。ただ、本職がトップ下の香川真司、左ウイングとフォワードの田中順也をインサイドハーフとして起用したのが問題だった。両者とも慣れないポジションでの起用に戸惑いを見せていたし、プレーにぎこちなさがあった。

香川や田中のようなアタッカーを最大限生かすためには、彼らを2列目で起用した方が良い。つまり、ザッケローニ体制と同じ4-2-3-1を採用すべきだったのだ。事実、前半途中からこのシステムに変更した昨年11月18日のオーストラリア戦(2-1で勝利)では、明らかに選手の動きが良くなった。本職の位置でプレーした香川が持ち味を発揮した(といってもベストの出来ではなかったが)のは、火を見るよりも明らかだった。

一貫して4-3-3を採用したアギーレには、彼なりの考えがあったはずだ。従来の4-2-3-1のままでは、アジアでは勝てても、ワールドカップでは勝てないと考えていたのかもしれない(結果的にアジアでも勝てなかったが)。だが、アギーレの選手起用は適材適所ではなかったし、攻守のバランスも決して良くはなかった。更に言えば、彼は元々4-3-3の信奉者という訳ではなく、練習では4-4-2も試行していたという。

そう考えると、4-3-3に強いこだわりを見せた今の彼は、柔軟性に欠けていたと言わざるを得ない。アギーレには、状況に応じてシステムを変更できるだけの采配力と豊富な経験があっただけに、なぜ4-3-3に執着したのか疑問である。

2月5日現在、アギーレの後任となる人物は発表されていない。新指揮官は4-3-3を継続して採用するのか、それとも4-2-3-1に戻すのか。Jリーグで3バックを採用しているチームが多いことを考えると、3バックもありえる。

いずれにせよ、今いる選手を最大限活かせるシステム、戦術を採用できる人物がふさわしい。昨シーズンまでヴァンフォーレ甲府を率いた城福浩(現在はフリー)は、チーム状況を冷静に分析した上で、4バックから3バックへとシステムを変更し、クラブ史上初となる2年連続の残留を成し遂げた。

報道を見る限り外国人監督の招聘が現実的だが、果たしてどうなるか。日本サッカー協会の決断を注視したい。

2015/02/05 written by ロッシ


筆者名:ロッシ

プロフィール: 1992年生まれ。1998年フランスW杯がきっかけでサッカーの虜となる。筆者の性格は堅実で真面目なため、ハビエル・サネッティ、長谷部誠、ダニエレ・ボネーラ、アルバロ・アルベロア、マッティア・カッサーニにシンパシーを感じている。ご意見・ご感想などありましたら、ツイッターアカウントまでお寄せください。
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