戦術: 中東の技術+身体能力+現代サッカー

マフディ・アリが志向してきたサッカーは、前項のアブドゥラー・ミスフィルがやってきたことと相似している。

つまり、選手の質に合わせた現代サッカーである。違うのは、そのメンバーがずっと彼と一緒にやってきた選手であり、そして個人能力も非常に高いことだ。

前線のトライアングルはまさに絶対的な存在。

かつて第2次黄金期にイスマイール・マタルとコンビを組んでいた小柄なFWファイサル・ハリルの弟であるアハマド・ハリル。非常にパワフルで、高く、そしてスピードに優れる。

圧倒的な技術と、ピッチを俯瞰で見ているかのような視野の広さを兼ね備え、UAE史上最高の才能と評価される『天才司令塔』オマール・アブドゥラフマン。

そしてロンドン五輪で加わり、前線の連係を一層強くしたのがアリ・マブフートだ。2010年のメンバーではないが、アル・ジャジーラで元ブラジル代表FWリカルド・オリヴェイラをサイドに追いやってレギュラーを獲得したほどのスピードスター。

彼の発見によって、アハマド・ハリルのパワーに頼りがちだったサッカーに飛び出しというオプションが加わり、オマールのパスを生かせる組織が完成された。

(アリ・マブフートとアハマド・ハリル)

この3名を支えるボランチもまた、彼らの動きをよくわかっている。

アミール・アブドゥラフマンは機動力に優れた献身的な選手で、UAEには貴重なチームとして生きるプレイヤー。ハミース・イスマイールは、前線が詰まれば職人芸のような無回転シュートでゴールを狙ってくる。

彼らの連動した動きが攻撃の核。最終ラインも含めた組織的なパス回しが可能である上に、前線の3人だけでも点が取れるのが強みである。日本が中盤の主導権を握ることに成功したとしても、カウンターは大きな脅威となるだろう。

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