Q- 今、話が出た様に「アオアシ」はJリーグのユース年代が題材ということで非常に珍しい作品だと思います。現在はセレクションがはじまるところ(第2話読了後にインタビュー)で話はまだまだ見てこないのですが、どういう話になるのでしょうか?

上野- まだ詳しくは話せませんが...、ただ、私がこの作品の協力をするにあたって1つだけ編集担当にいったことがあります。それは「育成年代の物語=指導者の物語」ということです。指導者のことはしっかり描いて下さい、とお願いしました。



第2話の扉絵。主人公とスペイン帰りの監督福田達也がW主人公の様にうつっている。


Q- それが、ユースの監督である福田達也ですね。今回の作品は連載開始時に「日本代表FWで柏レイソルの工藤壮人協力!」といった取り上げ方もされていたので、ネットでは「柏レイソルの新監督吉田達磨氏と似ている。彼がモデルなのではないか?」と囁かれていますが。

上野- それは知りませんでした。ただ、ちょうどここ数年、柏レイソルと大宮アルディージャのユースを追っていて運が良かったこと思ったことがあります。それは、2チームがプレミアリーグに昇格して、柏は今季チャンピオンシップにまで進出しました。

また以前、柏ユースは2008年のU-18ビジャレアル国際大会にも招待され、そこで非常に高く評価されました(編集部注:柏のMF仙石廉は大会最優秀選手にも輝いた)。あの大会は本当に衝撃でした。その時の監督が吉田達磨さんでした。


Q- 今回は原案協力ということですが、取材といってもどういうことをされているのでしょうか?

上野- 多岐にわたります。先の話でいえば、第二話で登場したクラブハウスは大宮アルディージャがモデルです(笑)。

大宮アルディージャ公式Facebookでも喜びの声が。


また、ヨーロッパの大会や女子の育成まで取材しているのですが、例えば「どこのチームはこういう練習をしているよ」と紹介したり、編集部を通して上がってくる色々な希望に応えている様な状況です。


Q- 第2話では、主人公がセレクションを受ける前までの話でした。そこで、「セレクションの合格者はほぼ0だ。」と告げられますが、取材に基づいた話なのでしょうか?

上野- これはクラブによります。あるJクラブでは、だいたい一学年15人前後が在籍しているのですが、そのうち9割以上がジュニアユースからの持ち上がりと、スカウトして連れてきた地域の優秀な選手です。セレクションをする前に、もう優秀な選手は各クラブ情報を持っているんですね。だから、「イレギュラー」は余りいません。

実際の例でいえば、大宮の今井智基選手は、地元・千葉の町クラブ出身ですが大宮ユースのセレクションでゴールをしてその時の監督だった佐々木則夫さん(後のなでしこジャパン監督)に見いだされたとかでしょうか。逆にセレクション合格者が増えているチームもあります。しかもそのチームは、全国から受験生が来ています。


Q- ユースの厳しさは実際にサッカーをしていた人間にはわかると思います。一方で、「高校野球における甲子園」の様な一発勝負のトーナメントがあって絶対に負けられないみたいなドラマが使えないわけじゃないですか。その辺りはどう考えていますか?

上野- サッカーは「リーグ戦文化」が基本ではありますが、高円宮杯はそうなっていても、例えばユース選手権やJユースカップにはトーナメントがあります。高校の部活との違いに焦点をあてられたら面白いですね。

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