選手としては大成しなかったものの外国で指導者としての才能を開花させたサンパオリ。
ペルーでは昨年まで柏レイソルでプレーした澤昌克を指導。コロネル・ボログネシという小さなクラブを国際大会出場にまで押し上げると、斬新なパスサッカーで脚光を浴びたサンパオリは2011年にチリ3強の一角ウニベルシダ・デ・チレの監督に招聘される。するといきなり同年のコパ・スダメリカーナ制覇という快挙を成し遂げ、翌年にはスルガ銀行チャンピオンシップで来日。PK戦の末に鹿島に敗れたもののそのアクティブな戦いが高く評価された。
彼のスタイルは一言で言えば超攻撃的フットボールだ。相手によってDFの枚数こそ変えるものの、両サイドバックが常にウィングのように高い位置を取り、圧倒的な運動量と弛まない圧力により相手の自由を奪いつつ目まぐるしくポジションを行き来し、大人数でゴール前に雪崩込むもの。リスク度外視の特攻的フットボールは持続性という弱点をはらむものの、ハマった時の強さは他の追随を許さないものがある。
それは時間の限られる代表で実践するにはあまりにリスクの大きなものだったが、チレ時代の愛弟子マルセロ・ディアス、エドゥアルド・バルガス、ホセ・ロハスらを代表でも重用することでチームはすぐに好転。更にサンチェスとバルガスの2トップが爆発し南米予選でアルゼンチンに次ぐ29ゴールを奪い南米予選を3位で通過した。
ビエルサが撒いた種がこの国の“アイデンティティ”へ昇華するほどまでに大きく育ち、ニューウェルスの後輩サンパオリの手により大きな花を咲かせようとしているのだ。