スポルティング・ヒホンに所属していたDFハビ・ポベスはトップチームデビューから2ヶ月、わずか1試合の出場でフットボールの世界から足を洗うことを決めた。
自らヒホンとの契約を解除し恵まれた職業であるはずのサッカー選手を辞めた彼の行動は失業率が20パーセントを超えるなど経済危機に揺れるスペインで大きな反響を呼んでいる。
マルクスの『共産党宣言』やヒトラーの『我が闘争』が愛読書だというポベスは、『EL PAÍS』のインタビューでフットボール界は金に塗れた腐った世界だと吐き捨てた。
―この決断を下したわけは?
「最初は(辞めたことが)正しい判断だったのか悩むこともあったけど、(サッカー界で)過ごしてきた時間と経験からこれは自分の人生じゃないという決心に至ったんだ」
「幼い頃は好きでスポーツをやっていたけど、フットボールの世界を知れば知るほど、金が全てがなんだということを思い知らされた。それ(金)は汚く、熱意や情熱を奪い去ってしまうんだ」
―信念がありそうですね?
「そうだね。この決心が一時的なものなのか時間を懸けて考えたけど、他チームからオファーがあったとしても結局はこの結論に至ったはずさ。多くの苦しんでいる人々から800、1000ユーロを得ることに何の意味がある?」
―もしヒホンが契約を続けようとしたら?
「(サッカーを)続けたとは思わない。昨シーズンが開幕したときにプレーすべきではないと思ったし、契約も解除しようと思っていたからね。オレの話し方、服装、ヘアスタイルがこの世界から離反してると見られていたし」
―監督のプレシアドや仲間にこのことについて話しましたか?
「プレシアドは何をしようが何を着ようが気にしない、オレの全てを見て判断すると言ってくれた。いつもとてもよくしてくれたし、他の人間と変わらず接してくれた。クラブ内に嫌な人間はいないけど、サッカー界にはね…。スポルティングにはとても感謝してるんだ」
―あなたが多くの人の参考(見本)になると思いますか?
「自分はひとりであることのほうが好きだし、誰かの見本になるようなことは嫌だね。“ハビ・ポベス"がアイコンになってほしくはないし、ひとりの人間として不平等と戦いたい。すべての人々が平等で、みんなが一緒になって瑣末な争いを止めて前に進むことを願っているよ。詰まるところ世界が自滅する日はそこまできてるのさ」
ヒホンの同僚の多くはポベスの決断に驚いたというが、遠征の際にポベスと同部屋だったFWダビド・バラルは「プレーを続けるための素質すべてを備えていたので、すぐに引退してしまったことに驚いたよ。彼には彼独自の考えがあって、自分には自分の考えがある。でも、友達だから彼のことをサポートするよ。彼は素晴らしい気概の持ち主だからね」とスペイン紙上で語った。
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