今季、スパーズ躍進の立役者となり、日に日に市場価値も上昇している、トッテナムの守護神、エウレーリョ・ゴメス。
同クラブの指揮官ハリー・レドナップもブラジル代表GKには全幅の信頼を寄せ、「ゴメスは世界最高のGKの一人だ」とも称賛している。
だが、評価が高まるにつれて、負の要素も発生するのがフットボール界の常識。今夏、スパーズは、他クラブの食指が動く“銘柄”の流出阻止に躍起にならせざるを得ないだろう。
ドイツの盟主バイエルンは、シーズン開幕前、オリヴァー・カーンの後継者としてミヒャエル・レンジンクを指名した。だが、偉大な先駆者の名前に負けたが、フットボール史上に残る伝説的なGKの後釜を担えるほどのパーソナリティーとアビリティーは持ち合わせていなかった。これにより、バイエルンは2nd.GKに据える予定であったハンス=イェルク・ブットを正GKに格上げ。衰えが顕著な元ドイツ代表GKに後任を託したのだった。
クラブがチャンピオンズリーグ決勝まで進出したこともあり、ブットに直接的な批判がなされることは少ないが、全盛期を知る者からすれば、彼の能力低下は目を覆いたくなるほどだ。
ブレイクアウェイ時の出足、ハイボールに対する落下地点の入り方等、動きだしの素早さと正確さが求められる状況になると、サポーター達をヒヤヒヤさせる。また、彼はPKキッカーを任される“正真正銘のPK職人”としても知られるが、バックパスの処理を含め、ディストリビューションの質は、欧州では「なんとか標準値」という評価が妥当なとこだろう。
当然、このような不安要素を抱えたGKを頼りきることは出来ず、バイエルンが考える、来季に施す最優先修繕箇所はこのポジションであると目されている。
そして、シャルケに所属する、ドイツ代表1st.GKのマヌエル・ノイアーと共にその獲得候補に挙げられている選手がスパーズのゴメスなのだ。
バイエルンには、PSV時代のチームメイトであり、親友の一人であるマルク・ファン・ボメルも在籍しており、ゴメス獲得時に生じる、他クラブとの“綱引き合戦”では一歩リードできるというアドバンテージはあるが、無論、来季のCLでの躍進も狙うスパーズが簡単に手放す意思はなく、その終着点は未だに読めない。