「目の前で人が熱狂して喜ぶ仕事はなかなかない」
――現在の石井さんは人材業界でお仕事をされているそうですが、どのような点がスポーツビジネスの魅力だったと思いますか?
目の前で人が熱狂して喜ぶ仕事はなかなかありませんから、それはスポーツビジネスの魅力であり、醍醐味だと思います。
僕が社長を務めたザスパクサツ群馬(現ザスパ群馬 )も、一時は1引き分けを挟んで10連敗を経験しましたし、降格の危機を感じながらの日々を過ごしていましたから。
最終戦は「勝てば残留。負ければ降格の可能性がある」という中で迎えましたが、その時は見事に大勝して、残留を決めることができて…。サポーターのみなさんも、スポンサーさんも、スタッフも、みな抱き合って喜び合う光景は今でも忘れられませんし、そういった熱狂を生み出せることは、スポーツビジネスの醍醐味だと思っています。
――少しお伺いしにくいことですが…。連敗している時にはどのような日々を過ごされていましたか?
アウェイ戦に敗れた後のホテルで、強化本部長と監督の三人で深夜遅くまで話し合ったこともありました。
試合後のスタジアムでサポーターに囲まれて、「社長はどうするつもりなんだ?」と4時間ぐらい問い詰められたり、ゴール裏に「石井社長のビジョンが見えない」という横断幕を出されたりもしました。
大変なことを数えるとキリがありませんが、それらの困難も別の業界では決して経験ができないようなものだと思いますし、今となっては良い思い出ですね。
――その中で特に落ち込んだことがあれば、その時のエピソードを聞かせてください。
主力選手の故障や欠場など、当初は想定していなかったような局面に出くわすことも多くありました。
印象に残っているのは、シーズン中に必死な思いで補強したストライカーとしての活躍を期待していた選手が、出場1試合目で怪我をしてしまったことがあって……。
その時はとてつもなく落ち込みましたよ(苦笑)。 でも、スポーツの現場にいるとさまざまな困難に直面するので、「自分の実力を試してみたい」と言う人には向いているんじゃないかなと思います。
前述のような苦しい場面もたくさんありますし、成功を掴むためには頭も身体もフル回転させる必要もある。でも険しい山だからこそ登りがいもありますし、僕個人としては、人生でそのような苦しい状況に身を置いてみるのも良い経験ではないかなと思います。
(後編へ続く)
愛しすぎ!Jリーグでユニサプライヤーの「一社一筋」を貫く5つのチーム
石井宏司氏プロフィール
1997年にリクルート入社、デジタル関連やエンタメ関連の新規事業、人材関連のビジネスプロデュースに関わる。その後野村総合研究所にて経営コンサルティング、事業再生、次世代経営者育成コンサルに従事。その後スポーツ業界に転身し、プロクラブのM&Aやアリーナ建設プロジェクトに関わる。Bリーグ千葉ジェッツふなばし、FC東京、ザスパ群馬の経営に関わった。