今年秋にチリで開催されるU-20ワールドカップ出場権を獲得したU-20日本代表。予選突破を決めたU20アジアカップ準々決勝のイラン戦は、激戦となった。
開始5分に先制されるも、30分に小倉幸成のミドル弾で追いつき、その後は日本がボールを握ってゲームを支配。しかしイランの体を張った守りをなかなかこじ開けることができず、結局勝負はPK戦へ突入した。
PK戦では流れを呼び込み、先攻のイランが2人連続で失敗。日本は1点リードして迎えた5人目、キャプテンの市原吏音がど真ん中に決めて歓喜の瞬間を迎えた。
「一つの目標であった、ワールドカップ出場権を獲得できたことは嬉しいですし、ほっとしているというのが最初にあります。1次予選からずっと苦しい試合を勝ち進んで、ここまで来て。僕自身としても悔しい思いをした試合もありました。チーム全体としてもなかなか結果が出ないときもあった中で、昨日の試合は本当に一つになれて、よりチームとしての自信がついた試合でした」
ここまでの戦いをそう振り返った市原。彼の言葉通り、U20アジアカップ予選は首位通過したもののキルギスと引き分け、今大会のグループステージでも1勝2分と厳しい試合が続いた。
イラン戦も早々に失点を喫したが、「逆に1点リードしているから向こうも引いてきて、自分たちがボールを持てるようになってゲームを作れたので、結果的には良かったんじゃないかなと思います」とプラスの面があったと語る。
迎えたPK戦、市原は円陣で「まずは後悔ないように蹴ろう」「チーム全員の思いを背負って蹴る人は蹴ろう」「どんな結果になっても受け入れよう」といったことを伝えチームを鼓舞したという。
一方で、チームメイトからすると予想外の出来事もあったようだ。PK戦に向けて行われた「エンド」と「先攻・後攻」を決める2回のコイントス、市原は両方勝ったにもかかわらず、後攻を自ら選んでいる。
「いやもう本当に、僕の独断なんですけど…。『2回勝ってきたぞ』と、みんなのほうに言いに行ったんです。そうしたら終わった後にみんな『え?』みたいな顔をしていたので、何かなと思ったら、PK戦は先攻のほうが有利というのを僕はあまり知らなくて(苦笑)。普通に後攻のほうが有利なのかなと思っていて後攻を選びました」と市原。ただ、彼の中ではすでに“シナリオ”ができていた。
「本当に何か分からないんですけど、コイントスで自分が勝ったとき、なんか本当にシナリオみたいのが頭に浮かんできて。5人で絶対終わるなと思って、しかも最後自分が蹴って終わるんだろうなというのを何となく感じていたので、迷わず後攻を選んじゃいましたね」
結果として先攻のイランは最初の2人が決められず、5人目のキッカーとして自らが勝利を決める。まさに市原の筋書き通りに日本は劇的な形でワールドカップ出場を決めている。
「今ちょっとほっとしているので、気持ちを切り替えて、また戦わないといけないです。次の相手はオーストラリア。本当に接戦というかどの試合も簡単ではないですし、1点差やPK戦の試合ばかりです。油断せず、しっかりいい入りができるように今日明日で準備していきたいと思います」
すでにプロで“違い”を見せている2028年「ロス五輪世代」の日本人5名
所属のRB大宮アルディージャでも主力となっている市原。頼もしい19歳のキャプテンとともに、U-20日本代表は再び中2日で迎える26日(水)の準決勝オーストラリア戦に臨む。