両チームのサポーターに深く感謝

新天地は多くの試合に出場できる環境を求めている薄井。プロになってから未だに公式戦に出場していない男は、試合に飢えている。自身の価値を高めるために、新チームでは自身の力を思う存分発揮する構えだ。

力強い跳躍でハイボール処理をする薄井

「僕は来年で4年目になるので、しっかりと試合に出られるところを見つけたいと思っています。もちろんいただいたオファーによっては考えるところではありますが、試合に出て自分の選手の価値として、そういうものを高めていきたいです。いまはまだオファー次第でありますが、僕のプレーを観せられる場所を選べたらと感じています」

これまで所属してきた2チームでは熱いサポーターに支えられたという薄井。松本は街を挙げて濃緑のユニフォームを着込んだサポーターたちが力強い応援で選手たちを支え、広島は新スタジアム『エディオンピースウイング広島』という理想的なサッカー専用スタジアムの中で鮮やかな紫のシャツをまとった観衆の声援がイレブンを後押ししている。

両軍のファンは温かく薄井を迎い入れ、練習場では多くのサポーターに見守られながらトレーニングに励んできた。守護神は両チームのサポーターの愛情に深い感銘を受けていた。

鋭いシュートをキャッチングしてスカウトにアピールした薄井(左)

「松本のサポーターさんは僕が試合に出ていないのに、普段からインスタのSNSや、練習グラウンドに来ていただいて、すごく優しい声をたくさんかけていただきました。初めて練習参加したときに、サポーターが練習を観に来るあの環境にすごくびっくりしました。僕の中の常識を覆されたといいますか、『こんなに観に来て応援してくれる人が普段からいるんだ』と驚きを隠せなかった。初めて見たときから松本のサポーターの方々をすごく大好きになりました。力不足で戻ることができませんでしたけど、別のところでも僕の名前が届くように頑張るので、応援していただけたらと思います。

広島のサポーターさんは練習を観に来てくれる人がすごく多いんですよ。初めて僕が来たときは、多分『誰だ?』と思われたかもしれません。J3から急にレンタルで入ってきて、『強化する場所そこじゃねぇだろう』と思われたかもしれません。ただ広島は選手もそうでしたけど、すごくみなさん温かいんですよね。サポーターのみなさんに触れ合ったときからすごく感じたので、カテゴリー関係なく、ものすごく平等に接してくれましたから、僕もすごくうれしい気持ちになりましたし、頑張ろうと思えました。1年間だけでしたけど、すごく感謝しています」と言葉に力を込めながら、サポーターへの愛を赤裸々に語った。

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トライアウトを終えた薄井はやり切った表情で会場を後にした。薄井と会って話した人間の多くが「気持ちのいい男」、「彼のメンタルは素晴らしい」と称えるほどの人間性を持っている。広島で大きく成長した守護神が新天地でも多くのファンを沸かせ、試合で躍動する姿を目に焼き付けたい。

(取材・文・撮影 高橋アオ)

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