今季契約満了となったJリーガーたちが集う『JPFA(日本プロサッカー選手会)トライアウト』が11日、12日に実施された。12日の部に参加したFC琉球(J3)を今季で契約満了となったFW野田隆之介はこの日最年長の参加ながら前線から積極的にチェックをしかけ、ベテランらしくないアグレッシブなプレーでスカウトにアピールした。
新天地を求める36歳
「サッカーは楽しいですね」
トライアウト後の取材で屈託のない笑顔で開口一番に発した言葉が印象的だった。その言葉通り笑顔を絶やさずプレーした野田はミニゲーム前の練習で鋭いシュートを放ち、ゲームが始まればよく通る声で仲間を鼓舞しながら前線からボールを追いかけるなど攻守に存在感を見せた。
「ゲームをやっていなかったけど、意外に身体が動きましたね。(琉球での)練習では紅白戦をやっていましたけど、それは10分ぐらいで終わってしまう。こういうふうに25分(のゲーム)は久々だったので、楽しかったです。
引いてボールを見て、ボールに合わして動く部分は、観に来てくれているスカウトの人たちから求められていないかなと思った。どれだけ動けるか、どれだけ自分ができるかを、僕自身も観てほしかった。意識的にどんどん前に行くように、チーム全体に言っていましたね」とプレーの狙いを語った。
日本経済大(福岡県太宰府市)卒業後は、サガン鳥栖、名古屋グランパス、湘南ベルマーレ、京都サンガと名門クラブを渡り歩いてきたストライカーは、トライアウト初参加となった。
トライアウトの参加はプロ選手からすれば葛藤を伴うものだという。多くの選手から「できればあのトライアウトには参加したくない」、「あのトライアウトに出たら選手として終わり」といったネガティブな声が聞こえてくる。昨年のトライアウトに参加したJ3ギラヴァンツ北九州MF喜山康平も「若いときは『トライアウトに参加するときは終わりだ』と思っていた」と葛藤を乗り越えてプレーした。
当然野田もその苦悩を抱えていたが、「最初は(葛藤が)ありましたね。だけど自分のいまいる立ち位置をしっかりと理解して、やれることをしっかりやろうと。変なプライドがないことが僕のいいところでもあるので、しっかりと切り替えて振り切って楽しくできました」と吹っ切れた表情を見せた。
昨季はリーグ戦32試合11ゴールとチームトップスコアラーの活躍を見せたが、今季はリーグ戦21試合1得点と力を出し切れなかった。それでもベテランストライカーは「最後は苦しい時間の方が多かったけど、その中で人として成長できたかなと思いますね」と精神面での成長を強調した。
進路は「Jリーグでやりたいですね」と希望する野田は、プロで戦い続ける意向を見せた。2シーズンに渡って琉球でキャプテンを務めたキャプテンシー、ゴール前での力強さと鋭さ、明るい人柄は新チームにいい影響を与えるだろう。そしてJの舞台で野田の活躍を観たいファンは数多くいる。
去り際に「サポーター以上に僕の方が寂しいと思うので、その寂しさを紛らわすために、サッカーを頑張りたいと思います。まだ続けられるように頑張りたいと思います」とファンに向けてメッセージを送った。
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ベテランらしくない元気はつらつなプレーで存在感を見せた燃えるストライカーの新天地はどこになるのか。再びJリーグのピッチで豪快なゴールを決めて多くの観客を沸かせてほしい。
(取材・文・撮影 高橋アオ)
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