いまや数多くの日本人選手が海外でプレーするようになった。
近年、増加傾向にあるのが、イングランド2部リーグ(チャンピオンシップ)だ。また、英3部のバーミンガムにも岩田智輝と横山歩夢が所属している。
そうしたなか、『The Athletic』は、「なぜ日本人選手はチャンピオンシップのクラブにとってこれほど魅力的になったのか」という特集を伝えていた。
英2部で首位を走るリーズに加入した日本代表MF田中碧を筆頭に、チャンピオンシップの24チーム中8チームに日本人がいる。日本人選手が英2部で増加している理由は、様々な要因が絡み合っているという。
英2部~4部クラブに選手補強のアドバイスを行うコンサルティング会社の共同設立者であるティム・キーチ氏はこう述べている。
「労働許可規則の変更は大きな変化だ。ブレグジット後のルールでは、ポイント制が導入され、日本のリーグは買い漁りの場になっている。ブレグジット前は、EUにおける移動の自由というルールの下で、日本からはフル代表選手としか契約できず、J1リーグの普通の選手とは契約できなかった。
そして、市場からは明らかな成功者が出ている。一過性の選手は常にいるものだが、数年前、アンジェ・ポステコグルー監督がセルティックにやってきて、日本人選手と契約した際、チームは勝っていた。
どんな市場にも固定観念というものがあって、日本人選手の場合、英国サッカー界でプレーするのに十分なフィジカルを備えているかどうかが問題になる。
そして、彼らがセルティックでプレーし、タイトルを獲得しているのを見れば、それ(フィジカルを備えていること)が証明される。ブライトンでの三笘薫の成功もそのひとつだ。
3つ目の要因は、比較的手頃な価格ということ。日本人選手に要求される移籍金は、数百万(ユーロ)ではなく、数十万というのが通常だ。日本から直接移籍してくる選手は、他のヨーロッパや南米諸国から移籍してくる選手よりも安い」
今夏、サンフレッチェ広島からブラックバーンに移籍した大橋祐紀をはじめ、英2部・3部でプレーする日本人10選手のうち、4人は日本から直接渡英した。欧州で人気銘柄になる前に獲得したいという姿勢の変化がそこにも表れているという。
J1、J2のスカウティング分析用の映像が入手しやすくなったことも要因のひとつだという。また、キーチ氏は、チャンピオンシップのプレースタイルが変わったことも要因のひとつに挙げている。
「(英2部は)10年前よりテクニカルになっている。ポゼッションベースで、ショートパスをつなぐスタイルの監督が多い。これは日本サッカーのステレオタイプに当てはまるが、おそらく真実だろう。日本でうまくいっているチームを見ると、ポステコグルー監督のプレースタイルを踏襲しているチームだ。そのスタイルに慣れている人材を探しているのであれば、良い市場であり、比較的手頃な値段で手に入る」
ある英2部クラブの採用責任者も、J1はフィジカルよりもテクニカルと評価しているという。
同紙は、「J1がチャンピオンシップのチームにとって重要な市場として成長するにつれ、有望なタレントを早期に発見する傾向がリーグ全体で拡大する可能性が高い」としている。今後もJリーグから英下部リーグに日本人選手が引き抜かれるケースは増えていく傾向にあるようだ。
なお、田中碧はリーズで2度目となる月間MVPに選出されたばかり。彼はリーズがプレミアリーグに昇格できなかったとしても、個人昇格する可能性が高いとされており、フォルトゥナ・デュッセルドルフからわずか350万ユーロ(5.5億円)で獲得したことはリーズスカウト陣の大手柄とされているとのこと。