懸念されていた「帰国できるのか」という不安
戒厳令下では、国境が閉鎖されることも多い。そのため、サッカー界ではJ1優勝争い中の神戸が帰国できず、今週末のリーグ戦の実施に支障をきたす懸念もSNS上では散見された。
こうした帰国への懸念についてOさんは「釜山の空港が軍民両用なのでそこが不安でした。飛行機が飛ばない場合にはフェリーの利用も考えていました。フライトレーダーのアプリなどで航空状況を確認していましたし、乗る便が昼だったので朝イチの便に切り替える可能性なども探ったりしていました」と不安な気持ちを語りつつも、過去の海外アウェイ遠征で鍛えられたトラブルへの対応力を見せた。
またツアーで今回のACLE観戦を行ったHさんも「(不安の気持ちは)あるにはあったが、時間が時間だけにできることもないので、とりあえず様子見をしようという気分だった。ホテルでニュースをチェックし、戒厳令の解除が決まったタイミングでひとまず帰国に支障はないと判断した」と語り、帰国に対する不安の気持ちはあったものの、国会で戒厳令解除要求の議決が可決された時点で、帰国できると考えていたようだ。Hさんによると、その後、ツアーコンダクターからフライトは予定通り運航される旨も伝えられたという。
なお両氏ともに当初のスケジュール通り、翌4日中に帰国を果たしている。
今回試合が実施された浦項市は、騒動の中心地となった韓国の首都ソウルから約250km離れた場所にある。両氏の証言からも分かるように、ソウルを除いた韓国国内では、完全な日常とまではいかないものの、平穏な状況にあったようだ。
海外などでテロや政権転覆などが発生した際は、外務省や日本大使館から安否確認の連絡などが行われることもあるが、両氏はいずれも日本の公的機関からの直接の連絡などは受け取っていなかった。
韓国サッカーへの影響は
韓国メディア『OSEN』によると、戒厳令布告後、韓国国内ではイベントの中止が相次いだという。
また同メディアは、集会やデモなどが規制される戒厳令下でも、政治的性格の少ないプロスポーツは制限されないとしながらも、戒厳司令部の解釈次第では試合開催が制限される可能性もあると語った。
そのため戒厳令が中止されない可能性に備え、昨夜の韓国プロスポーツ関係者は事態に対し固唾を飲んで見守っていたという。
しかしながら、戒厳令が中止された現在、Kリーグやアジアサッカー連盟(AFC)から試合の中止などの声明は行われておらず、試合は予定通り実施される見込みだ。